最終章 告白
陽大、どこにいるの?みんなが帰っている途中、私は逆走して全力疾走をした。校門前に着いて、桜吹雪が舞う真っすぐな桜並木を走った。でも何となく、陽大のいる場所は分かっていた。
「見つけた!…やっぱりここにいた。」
陽大はいつも通り校舎前のベンチに寝っ転がっていた。
「春歌?」
ゆっくり陽大は起き上がって立ち上がり、スポーツドリンクを少しだけ飲んだ。もう逃げれない、絶対に言おう、菜緒のためにも、私のためにも。
「小学生の時から、陽大のことがずっと好きでした。」
しばらく沈黙の時間が続いた。絶対断られる。だめだ。もうこの場から逃げたい。そう思っていた時、陽大は私に近づいて、私の髪の毛を優しく触った。
「今回は髪の毛か。」
髪の毛に桜の花びらがついていたらしく、陽大は優しく取ってふっと息を吹き込んで空に飛ばした。その後陽大は私の目を真っすぐ見つめてほほえんだ。
「俺も、春歌と初めて会った時から好きだった。だから、俺と付き合ってください。」
私の視界には、桜の花びらと、笑顔の彼がいた。思わず私は彼の胸に飛び込んでこう言った。
「よろしくお願いします!」
私たちは晴れて交際することになり、その日は桜並木の下をいつもよりゆっくりと歩いた。
本当に私たち、付き合えるようになったんだ。ずっと好きだった初恋の人と付き合えるなんて夢のようだ。帰り道、ちらっと陽大の方を見てみる。
「ん?どうした?」
「な、なんでもない。」
だめだ。付き合った瞬間すっごいかっこよく見えちゃう。こんな鈍くさい女が陽大の彼女になって良かったのかな。色々な想いがどんどん溢れ出てくる。
「え!春歌どうした?」
その瞬間、陽大の前でぶっ倒れてしまった。やばい、意識が朦朧としている。はあ、付き合ってから早速ぶっ倒れて迷惑かけてるとか私どんだけ鈍くさいわけ。
「はあ、春歌は本当にすぐ倒れるよな。」
意識はあまりなかったけど、陽大が私をふわっと持ち上げて、おんぶをしてくれたことだけは分かった。
「昔っからだけど、ずっと一緒にいるのに春歌の行動とか考えてることだけは分かんないんだよなあ。」
小さい声だったから私は聞こえなかったけど、陽大は何かをぼそっと言って、家まで送ってくれたらしい。
あれから1年の時が経って、18回目の春、いまだに『桜の雨』の謎は明かされない。なんで10年に一度なのか、なんでそれが目に入ると人の心が見えるようになったのか。分からないけど、この『桜の雨』のおかげで、私の世界は変わった。
「春歌、行くぞ!」
「待って!今から玄関出るから!」
陽大は付き合っても相変わらずで、
「もう春歌ったら高3になっても寝坊とかありえないんだけど!遅刻しちゃうから早く出てきて。」
「はあ!お待たせ。もう菜緒までそんなせかさないでよ。」
「あーあ。菜緒を怒らせたあ。」
「ちょっと陽大!」
「2人も付き合って1年なのに相変わらずだなあ。」
いや、案外変わってないのかもしれない。少し変わったのは、本音をお互い言い合えるとっても大切な親友と恋人ができたっていうことかな。そんな私たちは今日も、桜並木を笑顔で歩いている。
桜の雨 @reina0325
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