第2章 変化

 翌日、いつも通り私は菜緒と陽大と登校をしながら、昨日のことを話していた。

「昨日、春歌が急にぶっ倒れて本当にびっくりしたよ。(死んだかと思った。)」

「ほんとだよ。お前ってやつは何してんだよ、バカのくせに。」

「ちょっと陽大!バカはあんたの方でしょ?始業式サボったんだから。」

「よく『バカは倒れない』とか言うだろ?始業式はしょうがないだろ、校長の話が長いんだから。」

「しょうがなくない!あと私はバカじゃないもん。むしろ天才なんだから!」

「はぁ?それは俺だし!」

「お2人さん、お取込み中のところ悪いですが、『バカは風邪を引かない』の間違えですよ。(面白いなぁ。)」

「わぁ!さっすが菜緒は天才!」

「ふふふ。それで天才って春歌もわかってなかったんじゃないの?(2人といると本当に面白いな。)」

「し、知ってたし!」

そんなくだらない会話を繰り広げながら3人で学校へ向かう。これは小学生の時から変わらない日常の一部。そして校門を通ったときに、昨日のピンク色の雨を思い出して2人に話そうと思っていたら

「あ、ごめん春歌、私ここで待ってなきゃいけないから。(どうせまた告白なんだろうな、面倒くさい。)」

「ごめん、俺も部活のミーティングが校庭であるから先教室行ってて。」

と言われてしまった。

「ふっふっふ、菜緒ったらまた告白かー。いくらモテるからって告白受けるのめんどくさがらないでよねっ。」

「え?なんでわかったの?(春歌の勘?)」

「菜緒は学校一の美女だもんな。じゃあまた教室でな。」

「おっけー。え?勘じゃないよ?今菜緒が言ってたじゃん。」

「え、言ったっけ。まあいいや、じゃあ春歌は先行ってて!(なんで私の思ってることが分かったんだろ。)」

「はーい。」

ちょっとだけ奇妙だなと思ったけれど、そんなに深くは考えずにいた。

 けれど、その日の放課後も。

「菜緒、陽大、一緒に帰ろ!」

「おう!」

「うん、帰ろ!(今日も疲れたぁ。)」

「それなぁ、ほんと疲れた。」

「え?(まただ。春歌、なんで私の思ってること分かるの。)」

「だって菜緒口に出して言ってたから。ねっ陽大。」

「は?お前ら何の話してんの。」

私はこの時、ある特殊能力が自分にあることに気がついた。それは、

「人の心が読めるようになったんだ。」

「「は?」」

「あ、ごめん何でもない!あはははは。」

ついてないことばかりの人生の中でなぜか急に身についたこの特殊能力のこと、仲の良い菜緒と陽大には言いたいところだけど、この能力を2人に明かして能力を失ってしまったら怖い。だからしばらくの間はこの黙っておこう。そして黙っている代わりに、この特殊能力を使って2人に何か手助けをしよう。そう決めた。でも手助けって何をしよう。

「あ、そういえば菜緒、告白はどうだったんだ?」

「もちろん断ったよー。(タイプじゃないし。)」

「まじかぁ。」

「菜緒の好きなタイプってどういう人なの?」

「んー、王道だと思うけど、優しくて面白い人かなぁ。(あと、運動部がいいな。)」

「お。優しくて面白いって俺のことか?」

「はあ?ぜんっぜん違うから!(まあ当てはまってるっちゃ当てはまってるけど。)」

分かった、私のするべきこと。それは、菜緒と陽大をくっつけさせることだ。この会話を聞く限り、明らかに菜緒の好きなタイプは陽大だ。だから菜緒の好きな人は、きっと陽大。陽大は割と優しいし面白い時は面白い。しかもサッカー部で運動ができてそこそこモテる。それで学校一の美女でとっても頭が良い次期吹奏楽部部長候補とされている菜緒がくっつけばもう学校一最高のカップルになれるはずだ!

 そうとなったら、今から行動に移さなきゃ!そう思うけど、少し心がもやもやした。だって、陽大は私の初恋の人だったから。でも、その気持ちは抑えなきゃ。

「春歌?急に黙り込んでどうしたんだ?」

「ご、ごっめーん!そういえば私、今日塾だから早く帰んなきゃだったあ!だから2人でゆっくーり帰ってて!ばいばい!」

「最近の春歌、変だよな。」

「そうだよねぇ。(何か変なことでも考えてるのかな。)」

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