警告
僕は、アパートの部屋で写真現像用に使用している二十八インチのモニターに今日、ライカが撮った二枚の写真を立ちあげた。
新宿と渋谷、、写真からなんとか場所は特定出来たものの、逆に言えばそれ以外は何も分かっていない。
しかし、気になるのは、この電信柱に隠れている人の姿だ。夜の撮影だからだろうか?とてもノイズが多く鮮明ではない。
僕は、編集ソフトで、できる限りノイズを取り除き、電信柱部分の露出を明るくしていく。すると少しづつ浮かび上がってきた。
「ん!?これは、、」
どうみても、若い女の子に見える。しかも着てる服はもしかして制服ではないだろうか?そして、その横でその女の子と手を繋いでいるのは普通のサラリーマンの様に見える。ということは、援交か!?
だとすれば、かなりやばいものがこの写真に写っているということだろう。
この写真を元にもう少し推理をしていけば何か突破口が開くかもしれない。
パソコンをシャットダウンして、ふぅっと息を吐き出し天井を見上げる。
どれくらいそのままでいただろうか?ふと時計を見ると午後十一時を過ぎていた。
僕はゆっくりと風呂場に向かい、熱いシャワーを浴びる。そして、随分前に買っていた缶ビールを冷蔵庫から取り出すと、一気に半分飲み干した。日頃は余り飲まないのだが、今日はアルコールの力でも借りて、ゆっくりと眠りにつきたいと思ったのだ。
だが、ベットに入っても目が冴えてなかなか眠れない。浮かぶのは美依由の可愛らしい表情や触れ合う際に感じる温もりだった。だが、いつのまにか、血だらけで地面に倒れている彼女の姿が僕の頭を占拠する。
もしかすると、もう余り時間がないのかもしれない。果たして、僕に彼女を助けることは出来るのだろうか!?幻のライカを授かっても僕なんかじゃ駄目なのではないか!?
考えれば考えるほどますます眠れない。
その時、一通のメールがポンと音を立て送られてきた。僕は、充電していたスマホをベット横の棚から取り出す。見るとそれは、カフェ光芒のマスターからだった。困難な状況に陥っている僕たちに優しく手を差し伸べてくれるマスターには感謝してももしきれない。
「幻のライカについてさらに調べてみたよ。すると、未来からの写真は合計五枚しか撮れないということが分かったんだ。君は、その五枚で判断して動かなければならない」
僕は、ベットで横になりながら、これまでの四枚の写真を思い出す。正直、どれも決め手に欠ける。次の五枚目の写真で犯人の顔がわかるのだろうか?
だが、五枚目に、もし犯人の顔が写っていないとすれば、難易度は格段に上がる。手がかりが余りにも少なすぎるのだ。それは、僕が彼女を守ることが難しくなるということを意味する。
「ピンポーン」
その時、いきなりドアのチャイムが鳴った。
こんな時間に、誰も来るわけが無い。もう午前一時を回っている。
「ピンポーン」
呼び出し音がさらに響く。
僕は、静かにベットから身体を起こすとドアに向かって静かに歩いて行く。そして、チェーンをしたままドアをを少しだけ開ける。
すると、目の前にはオレンジ色の炎がゆらゆらと不気味にうごめいていた。
警察、消防の現場検証から、ほぼ放火に間違いないということだった。
幸いにも僕が素早く消し止めた結果、ドアの前に置いてあった傘とゴミバケツが焼けただけですんだ。
黙ってその場を立ち去ることも出来たはずなのに、犯人は何故、僕の部屋のチャイムを二度も押したのだろう?何故?
それは、きっと警告に違いないと思った。美依由との繋がりを断ち切れということなのだろう。だが、僕は、この事件がきっかけで、本当の意味で、強い覚悟を持つ事が出来ていた。
こんな卑怯な奴に負けてたまるか!彼女は僕が助ける!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます