喫茶瀬音里
僕は、大学が終わった足で、昨日、訪れたマンションを見上げていた。
午後四時五十五分。オートロックの向こうから小走りに走ってくるのは彼女だろうか?
「ごめんなさい。お待たせしました」
やはり、、とても可愛い。
僕は不覚にもドキドキしてしまった。
「いや、僕も今来たばかりだから大丈夫。じゃあ、歩きながら話そうか」
「はい。本当にわざわざ申し訳ありません。私の為に、、、」
「ストップ!もう、謝るのは無し!一緒に考えていくんだから、ねっ」
「はい。ごめんな・・・。あっ、すみません」
「ほら、また言ってるし。ははは」
もう溜まらなく可愛い。
僕とは全く違う世界にいる女子高生。誰もが振り向くその清楚な佇まい。そんな彼女と今こうして会話をしているなんて、それ自体到底信じられない。
だが、僕には彼女の未来の行方を探る使命がある。浮かれてなんかいられない。彼女に危険が起きないよう、最後まで集中していかねばならない。
- - - - - -
妹尾さんってこんな風に笑うんだ。
学校が終わり帰宅した私は、バイトの準備をするというよりも、髪型や化粧を治すことに思ったより時間を使ってしまった。少しでも妹尾さんに可愛いと思われたい。昨日会ったばかりなのに・・・。この胸の高鳴りは今まで経験したことがないくらいだ。本当に不思議。
約束の午後五時前、私は小走りで玄関に向かう。すでに妹尾さんは入り口で私を待ってくれていた。
自動ドアを明けると、笑顔で迎えてくれた妹尾さんは、チェックのシャツに濃紺のパーカーと黒のダウンジャケット、それにスリムのデニムを履いている。細身だからとても似合っている。ついつい見とれてしまうのを堪え、挨拶をする。
妹尾さんのご厚意で、私がバイトに入る際の送り迎えをやってくれることになったのだが、自分の死を突きつけられている恐怖の中において、逆に私の心はとてもウキウキしていた。それは、彼が傍にいるという最上級の安心感に包まれているからかもしれない。それを妹尾さんに気がつかれないかと冷や冷やしている・・・。
今日の真結の話からすれば、来週で私の臨時バイトは終わるだろう。
それまでに何かが変わるのだろうか?これからどんなことが起きるだろうか?
- - - - - -
彼女を
「いらっしゃいませ」
さっきまであれだけ元気に表情豊かだった彼女だったが、また凄く気怠い感じだ。
「あの、どうぞ。お好きな席へ」
「うん。ありがとう。ブレンドをお願いします」
「はい。かしこまりました」
彼女は、カウンターへ入っていくと、オーダーを厨房へ告げる。
見渡すと、今日もここ
僕は、ライカをテーブルの上に置いた。
カフェ光芒のマスターから聞いた話には実は続きがあったのだ。
それは、「この幻のライカが写す場所は、一箇所しかない。但し、それは出現した時々で変わる」というものだった。
だから、今回のケースで言えばここ
「お待たせしました。ブレンドコーヒーです。ごゆっくりお過ごし下さい。あの、これは私からのサービスです。良かったら食べて下さいね」
彼女は、珈琲とチーズケーキを運んできた。
「ありがとう。ごめんね。気を使わせちゃって」
「いえ。ここのチーズケーキ、とっても美味しいんですよ」
「そうなんだ。ありがとう」
僕は、会話をしながら、彼女の方へレンズを向け、シャッターを押そうとした。その瞬間、「カシャッ」と乾いた音が響いた。
「来た!!」
僕はシャッターボタンに指も触れてない。
だが、二回目のシャッター音も響く。彼女は、その音に気づかなかったのだろうか?カウンターへゆっくりと戻って行った。
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