誰かが見ている!?
「おはよう柊二!」
「おー、河合、朝から元気だな〜」
「おはよう〜〜柊二君!!」
「おーっす。坂田、借りた本もう少し待ってな」
「うん、いつでもいいよ〜」
「おはよう、髙橋君」
「おはよう〜。あ、、岡本、今日ってゼミの宿題、、提出日だっけ?」
「えっ、違う違う。来週だって!もう、やめてよ〜。私まで焦るじゃん!!」
「悪い悪い!!あー、、良かった〜」
彼の周りにはいつも多くの人がいる。そして、みんな笑顔だ。彼はみんなを幸せな気持ちにすることが出来る選ばれた人だと思う。
私も彼の所へ行きたいが、まだその輪の中に直ぐには入っていけないでいる。
ただ、みんなと楽しそうに話をしている彼を少し離れている所から見ているだけでも私はとても幸せな気分になるのだ。
だが、彼は、いつもすぐに私を見つけた。
そして、私の名を呼ぶのだ。
「香澄ちゃん!おはよう。今日、お昼一緒に食べようよ。すぐ近くにスパゲッティーの店が出来て、なんでもむっちゃ美味しいという噂なんだわ。行ってみーひん?」
「うん。勿論、大丈夫だけど、、。」
「良かった。では、二時限目終わったら、ここに集合ね!」
「うん。いつもありがとう」
「えっ、、俺が香澄ちゃんとご飯したいんだから、俺の方がありがとうって言わなくちゃ!そうでしょう!?」
彼は、いつも私を大事にしてくれている。こういう些細な言葉にも凄く嬉しくなる。
すると、突然、私は棘のある視線に気がついた。
”どこ?どこから? 誰かが私を見ている?”
心が強いアラート出している。私は、すぐに辺りを見渡すがそれがどこからか全く分からないでいた。気のせいなのかもしれない。ただ、その視線のせいで、私の心の一部は真っ赤に腫れあがり、そこがヒリヒリしているような感じがしていた。
二時限目が終わる頃になるとその傷はさらに深くなり、立っているのも辛くなってきた。約束の時間に遅れるかもしれないと思いながらも体は動かない。
「香澄ちゃん、香澄ちゃん! 大丈夫か?」
私は、キャンパスの中庭のベンチでぐったりと横たわっていた。
「余りにも遅いので探してたんや!スマホでメッセージ送っても既読にならないし。どうしたんや!?」
私は無理をして笑顔を作る。
「大丈夫、大丈夫……」
そのまま、意識が薄くなっていく……。
そして、気がつくと私は、保健室のベットに横たわっていた。
「あっ、気がついた。大丈夫か!?」
「う、うん。迷惑かけてしまって、、、。ほんとにごめんなさい。多分、貧血やし少し横になっとったら大丈夫やと思うけん」
「あー、良かった。一時はどうなることかと思ったで・・・。香澄ちゃんを背負って保健室探したんだけどなかなか見つからんでさ、、。ほら、このキャンパス広すぎてどこに保健室があるとか全然わからんかったし。そうそう、話変わるけど、香澄ちゃん、、もっとご飯食べなあかんわ。軽すぎやで」
私は、一気に頬が熱くなる。
「え、、背負ってくれたの!?ありがとう。うわぁ、、恥ずかしかー」
「もう、そんなこと言われたら、こっちこそ恥ずかしくなるやんか!!」
彼も一気に顔が赤くなっている。
「今日のランチの約束は、また今度にしような。ほら、これ置いていくから、調子良くなったら食べや」
彼は、小さなドーナツと野菜ジュースを私に手渡すと部屋を小走りに出て行った。
「ちょっと次の講義は出とかなやばいし行くけど、終わったら家まで送るから、静かにここにおってや。無理して一人で帰るとか絶対にあかんで。俺からのお願いやからな!守ってや!」
部屋を出ていく際に発した彼の言葉を思い返す。ベットに横たわっているのに、何故か顔がにやけている。私のことを凄く心配してくれて正直とても嬉しかった。幸せな気分に満ち足りた私は、いつの間にかまた眠りについていた。
「く、、、苦しい、、、、、。た、、、助けて、、、、、」
息ができない、、、。苦しい、、、、。
薄らと戻る意識の中、誰かが部屋を急いで出て行く気配がした。
「ごほっ、、ごほっ、ごほっ、、うー、」
気がつくと保健室で借りていた服の紐が首に巻き付いていた。
苦しくて涙が出てきた。なんで、服の紐が首に巻き付くの?こんなことが自然に起きるの?ただの偶然?それとも、誰かが私の首を絞めたの?
「明日、君の体調が悪くなる。但し、保健室は危険だ」
昨日の十一時に聞こえた声を思い出す。
その声の通りになっていることに気づいた私は、わなわなと震えだしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます