第13話 ふて寝

 帰宅後、さっき言われた『ビートモード』? で挑戦したが……


 散々な結果だった(泣)


『サバイバルモード』では、先生が伝授して下さった『心構え』さえあれば、敵が振り上げた剣のやいばの方向と速度から刀身が到達する位置と時間を予測して跳ね返し、その隙を突けるので、難なく順応出来た。


 ……ところが!


『ビートモード』に至っては、スライムが攻めてきて、あたふたしている間に『MISSON FAILED』になってしまう。


 両手の『ネオンスティック』をハチャメチャに振り回せばスライムを何個か斬れるが、そんな行き当たりばったりな戦い方では高得点は望めない!


 しかも、あんなダンスみたいな立ち回りをしながらだ。


 本番まで6日しか無いってのに、私みたいな運動神経が生まれつき存在していない人間が、急激に出来るようになるわけ無いじゃん😭


 もう、院長たちや人事課長に合わせる顔が無い……。


『退 職』の二文字が頭に浮かんだ。


 転職したら、性格を変えよう……。 


……下手に同情したり、安請け合いしたりするのは、絶対にめよ……。


 もう、クタクタだ。 心も身体も動けない……。


 私が部屋のベッドでふて寝てしているとノックの音がした。


 兄貴だった。


「お母さんから聞いたよ。 お前が急にゲーム止めて、夜飯よめしも食わずに部屋に籠もった……って。 どうした?」


 事情を話すと、兄貴はしばらく考え込んでいたが、どこかに電話した。


 そして……


「おい! 行くぞ!」と言って、ダレている私の手を引っ張った。


 私は「やだ! どこにも行きたくないっ!」と言って、兄貴の腕を振りほどいた。


「バカ! 本番までが無いんだから寝てる暇なんて無いだろうが!」


「どう考えたって、もう無理よ!」


「無理じゃぇ! 今ならまだ間に合う! 行くぞ!」


『寝てる暇なんて無い』って言うなら、どこかに行く時間だって無いでしょ!?


「……どこ行くの?」……私は兄貴を睨み付けながら聞いた。


「詳しい話は車でする! とにかく行こう!」


 ……私は渋々、兄貴の車に乗った。

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