第7話 お人好し

 何度も言っているが、私はゲームには全く興味が無い。 興味が無いものを貰ったところで、中古ショップに持って行って換金してしまうのがせいぜいだろう。 ……あ、それもアリか? ……コホンッ(〃ω〃)


 ……と、とは言え、一介の新米臨床検査技師が『要らんわっ💢』などと言える筈も無く、やはり、ここはやんわりと断る事にした。


「ありがたいお話ですが、やはり私には荷が重いです……。 逆に事務長さん、すごく詳しそうですし、ご参加なさるというのはいかがでしょう?」


「……いや! 面目めんぼくない! 自分は五十肩で、腕がこれ以上あがらないのですよ」……と言って顔をしかめながら『前にならえ』のポーズをした。


 ホントかなぁ?


『コン、コン、コン』


「ほーい」


 院長が返事をすると、食い気味で誰かが入って来た。


「遥さ〜ん!」


 満面笑みの人事課長だ!


「今、深田さんに、遥さんが院長に引っ張って行かれたと聞いて、ピンと来たよ! スポーツ大会に出場してくれるんだろ?」


「イエ……マダ……キメタワケデハ……」

「いやあ! 嬉しい! ……今回は出場選手選びの段階でかなり苦戦していると聞いていたからヤキモキしていたんだよ! このままではオレの人生最後の『町野グループスポーツ大会』観戦が出来ないんじゃないかとね!」


 ……私のささやかな抵抗は、人事課長の大きな声にかき消されてしまった(泣)


『人生最後のスポーツ大会観戦』……か……。


 本当に好きだったんだろうな。 ……少しオーバーな気もするけど……。


 人事課長の、今にも嬉し泣きしてしまいそうな顔を見ていたら、私のちっぽけなこだわりは消し飛んでしまった。


「……はい! 判りました。 どこまでやれるかわかりませんが、精一杯頑張ってみます!」


『そうか! やってくれるか!』

『さすが遥さん!』

『よっ! カモミーユ!』


『パチパチパチパチ!』


 なんか小っ恥ずかしいなあ〜


 ……こうして私は、別に欲しくもない『オメガα《アルファ》』とかいうVRゴーグルを貰い『町野グループeスポーツ大会』に出場する事になった。


 まあ、適当に剣を振り回していれば大丈夫でしょ(笑)


 ……とお気楽に考えていたのだが……


 なんと、この後、事態が二転三転してしまうのだった💦

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る