第4話 必殺!

「え? はるかさん、VRを知らない? お若いのに~!」


  ……院長が驚いた様子で言った。


「は……はい……申し訳ありません。 私、ゲームには全く興味が無いもので……」


「いやいや、謝る事は無いよ~! 『百聞は一見にしかず』だ! 事務長、例の物を!」


「はっ!」……事務長が目礼して席を立ち、箱を抱えて戻って来た。 ……箱には昔の水中眼鏡を大きくしたようなゴーグル? の写真が印刷してある。


「あ~! これならテレビで観た事があります! ……確かスマホを中に入れると映像が飛び出して見えるのでしたっけ?」


「チッチッチッ! それは『なんちゃってVR』。 これこそスタンドアローン式VR機器の最高峰『オメガαアルファ』だ」


 ……今時『チッチッチッ!』をリアルにやる人がいるのにも驚いたが、こんな事務長おじさん(←失礼)が最新機器の事を知っているのには脱帽した。 恐れ入りました。


 事務長は、穴の開いたアイマスクのような『VR用保護マスク』をかけ、手慣れた様子でゴーグルを覗き込んで、何か操作をした。


「準備、完了しました」


「よし! ……じゃあ遥さん、かけてごらん」


 ……院長に言われるがまま、私もさっそく『VR用保護マスク』をかけ、その上から『すたんどあろーんしきぶいあーるききのさいこうほう』? 『おめがあるふぁあ』とやらを装着した。




 ……!


 ……!?


 うわわわわわわわ!


 な! なにこれ~~~~~~~!?


 こ……ここ、院長室よね!?



 ……360度見回すが、どこをどう見ても、ここは院長室じゃない! ましてや日本でもない!


 崩れかけた摩天楼がそびえ立ち、あちらこちらに火の手が上がっているのか、空が赤く染まっている!


 ここは……


 さっき観た『サーベルタイガー』の世界じゃん!


『さ、これを持って!』


 誰かの声がして、何かを渡された。 視線を手に落とすと……


 これって、さっきのヒロインが持ってた武器!?


『敵襲! 『ネオン・サーベル』で応戦せよ!』……と声がした!


 ち、ちょっ、まてよぉ~~! まだ心の準備がぁ~~(泣)


 ……前にも言ったが、私はゲームとは言え、何かを攻撃したり逆にやられたりするのは苦手なんだ!


『ジャジャ~~~~ン♪』


 ファンファーレが鳴り響き『START』という文字が空間に表示された!


 次いで、ごっつい鎧を身に着けた兵士たちが襲って来た!


 これはゲームなんかじゃない! 本物の敵が襲って来たんだ~~!(←旧人類の思考)


「きゃあああ~~!」


 ……私はその場に座り込んでしまった!


 もういやだぁ!


 怖いよぉ〜〜!


 お母さぁ〜〜〜〜ん💦


 


 ……


『…………』


 ……ん? 何かが聞こえる!


『カモミーユ……カモミーユ……』


 ……! カモミーユ!?


 私が以前演じたお姫様の名前だ!

(かなりしつこいですが、本編第4章『スポットライト』をご参照下さい!)


『カモミーユ、今、民衆の為に戦えるのは貴女だけなのですよ!』


 ……お、お母さま? アネモーニお母さま!?


『さあ、カモミーユ! その正義の剣で敵を倒し、我が病院を……もとい、我が国を護るのじゃ!』


 ……父王さま!


『さあ来い、生意気な小娘こむすめ!』


 ……! こいつは、あのにっくきウェルダン男爵!(※カモミーユの宿敵)


 私の心の中に、あの区民劇『カミツレのブーケ』の記憶が鮮明に蘇った!


「さあ、来るがよい! 悪魔に魂を売った愚かな者どもよ! 我が正義のやいば受けてみよっ!」


 もう、恐れは無い!


 お母さまの為、父王の為、そして民衆の為!


「く ら え !  天 誅 ~ ~ !  『 ロ イ ヤ ル ・ ミ ル キ ー ・マ ー ー ー ッ ク ス ! 』」

(↑今名付けた、カモミーユの必殺技♡)

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