第3話 デインジャラス・ゾーン!

「では……ず、この映像をご覧いただこう……」


 事務長が、ちょっと気取った様子で手にしたリモコンを操作すると、窓がシャッターのように閉まり、照明が暗くなった。 


 ……!


 シャッターのように見えたのは大きなスクリーンだった。 さすがに映画館とまではいかないが、それなりに大きな画面で、シーリング・プロジェクターの映像を映し出す為のものだ。


『あぁ〜……こんなの買ってるから私達のお給料はやっすいのかあ〜……』……などとぼ〜んやり考えていると、重厚な音楽が流れ出し、画面に大きく文字が表示された!


『サーベルタイガー』


 何? アニメ!?


 ……その動画は、いかにも殿方とのがたが好みそうな、露出度の高い、ほとんど水着とも言えるプロテクターまとったCGのヒロインが、剣だか銃だか良く判らない武器を振り回しながら舞うように戦う……といった内容だった。


 ……院長・事務長・看護部長という町野中央病院の上層部と、入職後まだ一年にも満たない新米の臨床検査技師が、肩を並べて半裸女性のCGを眺めている姿は、シュールを通り越してアブナイ世界だ!


 ……スクリーンが上がると、陽の光が差し込んだ。 


 眼をしょぼつかせていると、事務長がメガネを外してハンカチで拭きながら……


「遥さんには、是非ともこのヒロインをやって頂きたいんです」……と言った。


 ……途轍もなさ過ぎて眼のしょぼつきが全く改善しない私を見て看護部長が……


事務長じむちょ! そんな頼み方じゃ遥さんが引き受けてくれる筈がないでしょ! ねぇ!」


 いやいや! 『ねぇ!』と言われましても、私はゲーム経験は皆無だし、そもそも論として、切った張ったは大の苦手なんだ!


 このお話は断固拒否したい!


 ……その事を正直に伝えると看護部長が座り直し……


「実はね、今回の人選は、病院職員の『総意』なの!」


 そ! 総意ぃ!?


 何で私が全く知らないうちにそんな話が進行してるのぉ!?


 事務長がメガネを胸ポケットに入れながら……


「今回のイベント『eスポーツ』で使用するゲーム『サーベルタイガー』は……『VR』ゲームなんです!」……と言った


 ……『ぶいあーるぅ』!?


 ナニソレオイシイノ(?_?)

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