第9章『剣』と『銃』!?

第1話 朝礼

『町野中央病院グループ』では、毎朝、職員全員がパソコンの前に集合して『全体朝礼』を行う。 そこでは理事長や院長の訓示や、新入職員の紹介、伝達事項などの報告が行われる。


 今回は、町野グループの恒例行事として毎年開催されているスポーツイベントに関しての発表があった。


 今回は、最近話題になっている『e スポーツ』による『施設対抗戦』になる……との事だった。



「『いいスポーツ』? ……って何?」


 朝礼後、五木技師長が深田先輩に訊ねた。


「『いいスポーツ』じゃなく、『e スポーツ』ですよ。 『エレクトリック・スポーツ』の略で……平たく言えば『コンピューターゲーム』です」


「へぇ〜。 そんなのが競技になるのか〜。 時代だねぇ……」


 五木技師長は全く興味が無いようだった。


 ……それもそのはず、五木技師長はボーリングが得意で、数年前に行われた施設対抗ボーリング大会では、惜しくも準優勝だったとか。


はるかはゲームとかやんねーの?」深田先輩が、例のボーイッシュな口調で聞いてきた。


「私、ゲームは全くやりません! 『ゲーム』とは言え、何かを攻撃したり逆にやられたりするのって、どうも苦手で……」


「あははは! 遥らしいね〜」


 ……横からみやこ先輩が……


「でも、遥、この前の区民劇で剣を振り回して大活躍だったよねー」と言ってきた。


 都先輩は、私が『カモミーユ』という男勝りのお姫様を演じた事を言っているんだ。


 ……以前、私は演劇に興味を持って『劇団あみーご』に体験入団した事があり、その際あれよあれよと話が進んで、何故か主役の『カモミーユ姫』を演じる事になってしまった。 (本編第4章『スポットライト』をご参照下さい🙇🏻 私の初恋物語でもありますっ♡

(〃ω〃)) 何だかんだ言ってるうちに入団する運びとなり、今は週一で続編『ライトグリーンの朝露』のヒロイン『アジャンターム』のお稽古中だ。


「いや、あれはあくまでも皆さんに楽しんで頂くための『お芝居』ですから〜。 本当に斬っちゃってる訳じゃないし〜」


「そうかー、遥なりの『線引せんびき』みたいなのがあるのねー」


 そうそう、そう言う事です(笑)


「では、遥! 2A病棟の心電図ECG回りに言って参りますっ!」


「お! 凛々しいね! さすが『アジャンターム』!」


「や〜だ! 止めて下さいよ深田さん! 却って緊張しちゃいますよ〜!」


「あははははは!」


 ……こんな呑気な平和主義の私が、これからに巻き込まれる事になるなんて、この時点では全く想像していなかった……。

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