第11話『BVM《バッグ・バルブ・マスク》』

 翌日の就業後、深田先輩に心電図室に呼び出された。


 ……ベッドの上には、はっしーこと親友のレントゲン橋本が寝ていた。


「あれ? はっしー……学校は?」


「サボり〜」


「こら〜っ!」私はおねえさんぶって叱ろうとしたが……


「嘘! うそよ! 試験休み!」


 なんだあ。 昨日からだったら、私ひとりで恥かしい思いをせずに済んだのにぃ!


「はっしーは『ICLSアシスタント』の石黒君と仲良くなりたいっていう欲望を満たす為に参加すんのよね」……と、深田先輩がシレっとした口調で言った。


「は〜い……よこしまな動機ですんません」


 ……なんだあ。 はっしーはそんな理由で参加するのかあ〜。


「何で私を誘った?」 ← 率直な疑問


「だってひとりじゃ寂しいもん」


 ……ベッドの上で私を上目遣いで見詰めるはっしーは……


 くっ、悔しいほど可愛い♡


 ……仕方ない。 今回は許して進ぜよう。 ← 何様なにさま


「さあっ、じゃあ始めるよ〜〜」


 深田先輩が、プラスチック製の風船? が付いた酸素マスクのような物を手にした。


「昨日、遥に出した問題の『BVM』の『EC法』って覚えてる?」


 あー、深田先輩が意地になって問題を出題してきた中の1つだ。(本章 第7話『にんげんだもの』をご参照下さい)


「コレが『BVM』……『バッグ・バルブ・マスク』ね」


 なるほどなるほど。 風船バッグとマスクがバルブて接続されている。


「持ち方はこう」


 深田先輩が実演してくれた。


 人差し指と親指で丸を作り、バルブとマスクの接合部を押さえ、マスクの部分を残りの指で固定している。


「ねっ、指3本が『E』の字、人差し指と親指が『C』の字に見えるでしょ! だから『EC法』って事」


 確かに! 駄洒落か。 ← 失礼


「持ってみ」


 ん……むむっ……これはコツが要る。


「この『BVM』は練習用だから、はっしーに実験台になって貰って当ててみて」


 ああ、思ったより簡単だ。


 ……と思ったのも束の間……


「では、そのまま『E』の3本指を顎にかけて『気道確保』……顎を引き上げて!」


 な! なんですとぉ!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る