第8話 古傷

「あたしが高校生の時、悪友とつるんで肝試しに行ったんだ……」


 ……と、深田先輩が、腕のキズ……そして『ICLS』に対するこだわりについて話してくれた。


 先輩たちが肝試しをした古いホテルが崩れ、先輩を始め数人が下敷きになってしまったそうだ。


 難を逃れた年長の人が看護師さんで、軽傷の人に的確な指示を出して、大怪我をした先輩たちの応急手当てをし、一番重症で、一時心肺停止に陥ってしまった先輩の親友の命をも救ってくれたと言う。


「あの時、応急手当てをして貰えなかったら、あたしも友人も死んでたと思う。 ……それから何年かして、あたしは町野ここに就職し『ICLS講習会』の存在を知ったんだけど……」


 喜び勇んで参加した深田先輩だが、心臓マッサージ実習の最中、腕がって動かなくなってしまったと言う。 深田先輩の腕の怪我はかなり重症だった為、長時間の動作には耐えられなかったんだ。


 ……かろうじて『ICLS』の終了証は貰えたものの、周りに協力者が居ない場合には、必ず誰かを呼んで、用手的心臓マッサージを依頼するように指導されたという。


 それ以来、深田先輩の心の中で『ICLS』の夢は破れてしまった……。


 ……のだが……


 私がはっしーから『ICLS講習会』に誘われた事で、深田先輩が胸中深く沈めていた筈の『ICLS』への情熱が再燃したのだった!



 なお、はっしーが私を『ICLS』に誘った理由……それは……


 またの機会に!

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