第7話 にんげんだもの
インストラクター……って、みんなに指導する……あれ?
「いや、深田さん! 私には無理ですよ!」
私は立ち上がりながら言った。
深田先輩は唐突に……
「遥、心停止の原因『4H4T』……言ってみな!」
よんえいちよんてぃー!?
「すみません……どれが『H』でどれが『T』かは判りませんが……『心タンポナーデ』『大量出血』『高カリウム血症』……『薬物中毒』…………後は……」
「ちぇっ! 答えやがった! もう良いよ!」
……『ちぇっ』って……
因みに正解は……
4H
4T
だそうな。
「じゃあ『BVM』の『EC法』を説明して」
……あっ……意地でも答えさせない気だ。
「……すみません……判りません……」
深田先輩は満足げに
「そうでしょうそうでしょう! ……判る筈が無いよね〜! 習ってないんだから」と言った。
左様でございます。 私、普通のにんげんだもの。 習ってない事は判りません。
「習ってない事は答えられないよね。 逆に言えば、習えば答えられるっしょ?」
「ま……まあ……多分……」
「ICLSインストラクターだろうがコースディレクターだろうが、習った事を他の人に教えるだけ。 無理な事なんて無いんだよ」
深田先輩が私の目を見詰め、両肩に手を乗せて、グッと力を込めた。
さすがに至近距離過ぎて恥ずかしくなり視線を
深田先輩もそれに気が付き、照れ臭そうに鼻の下を指で擦っている。
↑青春ドラマかっ!
私はちょっと
深田先輩……こと『ICLS』に関して、何でこんなに執心なんだろ?
「はるか」
……深田先輩がベンチに腰掛け、私を呼んだ。 私は、先輩の横にちょこんと腰掛けた。
深田先輩が、突然ジャージの上着を脱ぎ始めた!
きゃあ〜! 先輩! ま、まずいですよ、こんな所でぇ!
「ばかっ 違うわっ!」
深田先輩は私が顔を真っ赤にして何を考えているのか判ったらしく、そう言って私の頭を軽く小突いた。
……初めて見る先輩の二の腕には、くっきりした手術痕があった。
「……今でもここに……ボルトが3本埋め込まれてるんだ」
……!
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