第3話 バンをバンバン!

『ハマノリネンサプライ』さんのバンが戻って来た。


 下村さんが「や〜、申し訳ないですね」と言い、私も頭を下げた。


 ハマノのドライバーさんが「いえいえ、まさか、この車に移ってしまうとはね〜」……と言った。


 ……確かに「ニャ~、ニャ~」と、声がする。


「今日も寒いから、暖かいエンジンルームに誘われるように入っちゃったんでしょうね」……と下村さんが言った。


 ドライバーさんがボンネットを開けると、鳴き声がパッタリと止まった。


「『猫バンバン』やってみます?」ドライバーさんが言った。


 ねこばんばん?


『猫バンバン』とは、有名自動車メーカーでも提唱している、発車前にエンジンルームから猫ちゃんを追い出す方法だと言う。


 方法は単純明快! エンジンをかける前に、ボンネットをバンバン叩くだけ! これが効果てきめんで、音に驚いた猫ちゃんが逃げ出すそうだ。


 ……これは、決して猫ちゃんを虐待しているのではない。 下村さんも言っていたが、猫ちゃんが、エンジンルームを冷やす為ファンを回しているベルトに巻き込まれてしまったり、何かの衝撃で道路上に落ちたりしないようにする、猫ちゃんを守るための方法なんだ。


「じゃ、いきますか! せーの!」


『バンバンバンバンバンバン』 


「あ! 逃げました〜!」


 ……白っぽい猫ちゃんがバンを飛び出し、プレハブ倉庫の下に逃げ込んだ!


 すっ! 素早い!


 取り敢えず猫ちゃんが車から逃げ出したので、ハマノリネンサプライさんにはお礼を言って帰って頂いた。


 さてさて、これからが、本当の戦いだ!


 何だか楽しくなってきたぞ。


 ……私は、実は猫ちゃんを嫌いではない! 


 嫌いではないどころか、毎年のカレンダーは当然(?)仔猫ちゃんのだし、動物番組は欠かさず録画して観ている程だ。 こんな因果な体質で無ければ、飼いたくて飼いたくて仕方ないのですよ!


「私、一度家に戻って、手袋と取り網を持って来ます!」


 私は下村さんに監視を任せて自転車を駆り、張り切って家に向った!

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