第7章 アレルギー

第1話『巣窟』

 梅雨に入り、鬱陶しい日が続いていた。


 私は基本的に晴れ女なのだが、近くに雨男さんや雨女がいると、その人のパワーに負けてしまう。


 今年、私が就職した数ヶ月後、看護学生さんの病院実習が始まった。


(作者注:因みに拙作『臨床検査技師の「はるか」です! 第7章 実習生』……私の『大爆笑歓迎会』や『ボス』との一件は、時系列的には翌年の事で御座います~。 ややこしくて申し訳ございません!)


『今年の学生さんは、雨女が多い』との噂があった。


 認めたくないもの……だったが、確かに陽の光をあまり見ていない気がする。


 私は常に自転車移動なので、雨の日はレインコートを着て出勤する。涼しい日はまだ良いが、蒸し暑い日は中までびしょびしょになってしまうので、本当に鬱陶しいったら無い。


 ……その日は、朝から小雨が降っていたが、気温が低いのがまだ救いだった。


 病院に到着すると、裏口が妙に騒がしかった。


 ちょっと覗くと、学生さんや庶務のかたが、傘を差し、姿勢を低くして、何かを探しているようだった。


 まさか、また鈴森さんが何か無くしたんじゃ無いでしょうね? ……などと、鈴森さんにとんだ濡れ衣を着せつつ、庶務の下村さんに何があったかを聞いてみた。


 どうやら、子猫が夜通し鳴いていたらしい。


 猫かあ~


 ……私は猫の皮屑ひせつアレルギーがある。


 余談だが、実は幼少のみぎり、私はアレルギーの巣窟のような体質で、甲殻類・チョコレート・イカ・ハウスダスト・犬猫皮屑……等のアレルギーがあり、アレルギー性の小児喘息も標準装備(笑)していた。


 子供の頃、お邪魔したお宅に猫が居ると、洩れなくまぶたが腫れ上がり、くしゃみが止まらなくなった。 これにより『ニャンコ・ドコーダー』という不名誉な異名を与えられていた程だ。


 ふっ……今回ばかりは、私の出る幕はあるまい……とレインコートを翻し、颯爽とその場を去ろうとした時、下村さんのスマホに着信が入った。


「はい、お疲れ様です。 ……え? ええ~~!?」


 いつも静かな口調で話す下村さんが、突如大声をあげた!


 な? なんだぁ~?

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