第14話 見立て

 ……そして金曜日。 鈴森さんと待ち合わせて『手作り絵本サークル』の会合にお邪魔した。


 室内には、鈴森さんと同じ50代くらいの女性3人と男性ひとりが談笑していたが、鈴森さんが、うら若い女性であるわたくし烏滸おこがましい? を連れて来た事に、かなり驚いていた!


「ちちちち違います違います! こここここの人は僕と同じ職場の方で『はるか 真優まゆ』さんです。 漫画家志望で絵本にも興味があると仰り、一緒に来ました!」


 そそそそそこまでどもらなくても(笑)


「初めまして『遥』と申します。 鈴森さんが絵本をお描きになると聞いて、是非拝見させて頂こうと、こちらからお願いしてしまいました!」……といって、ペコッと頭を下げた。


「可愛らしいお嬢さんね! おいくつ?」


「はい! 21です」


「まー、うちの娘より年下だわ!」


「若い世代が絵本に興味を持ってくれるのは嬉しいな」


「この前、安西さんって若い人も入ってくれたし、私達『タロウとハナコ』の将来は安泰ね〜」


 ……! 出た! 安西さん!


 鈴森さんをチラ見すると……


 あ〜あ! 耳を真っ赤にして、下を向いちゃってる! これじゃバレバレだよ!


「こんばんは〜」


 ……と可愛らしい声がして、若い女性が入って来た。


「あっ! 『噂をすれば影』ね! 安西さん、こんばんは〜」……サークルの代表『大村』さんが女性に挨拶をした。


 ……安西さんは少し古風な感じの、優しそうな女性かただった。


「こちらは今日、見学に来てくれた『はるか』さん。 名前みたいな名字ねっ! ……って、鈴森さんが紹介してよ〜」と言いながら、大村さんが鈴森さんの背中をビシッと叩いた。


「……お、同じ職場の、り、臨床検査技師さんで、漫画家志望だそうです……」……と、鈴森さんが小さい声で言った。


「臨床……検査技師さん? 何かの検査をされているんですか?」


「はい。 病院で患者様の心電図や血液検査をしてます」


 安西さんが……「すご〜い! 病院の先生なんですね!」と、尊敬のまなこで私を見ている。


 ……以前も書いたが『臨床検査技師』という職業は知名度が低い。


「いえいえ! 私は検査結果を先生に提出して、診断のお手伝いをするのが仕事で、先生なんておこがましいです! どちらかと言えば、鈴森さんの方が『鍼灸マッサージ師』さんなので『先生』ですよ!」……と伝えた。


 安西さんが……「鈴森さん、凄く絵がお上手なので、どんなお仕事をしていらっしゃるのか聴いたら、何も言わずに逃げちゃったから、聴いちゃいけないお仕事なのかと思っていました!」……と言って苦笑した。


「鈴森さん、どこでも逃げちゃうんですよね」……と言ったら、ドッと笑いが起きた。


 笑いながらも、安西さんが鈴森さんをる目は、とても優しい。


 ……これ……ひょっとしたら、ひょっとする……かも!

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