第2話 惜別

 ……その日は、そのあと立て続けに検査が入り、かなり遅くなってしまったので、プリンに後ろ髪を引かれつつ、泣く泣く帰宅した。


 その晩、夢を見た……。


 ……いとしいいとしいプリンちゃんが、生クリームの涙を流しながら「さよなら〜」をしている……


 ……そんな夢だった。



 次の日……


 病院の前にパトカーが止まっており、野次馬が数名集まっていた。


 ……早々に職員入口から入って、検査室に行き、情報通の深田先輩に話を聴いた。


「昨日、3階のナースステーションに泥棒が入ったんだって!」


 ええ〜〜っ!


 ……ま、まさか……昨日見た夢は……正夢まさゆめ!?


「……で、な、何を盗まれたんですか?」


「あ〜、それはまだ聴いて無いんだ〜。 判ったら教えるね〜」


 ……そうか……プ……プリン〜……私のプリン、大丈夫だったかなあ〜(泣)


『コンコンコン』……と、検査室のドアがノックされ、3階の糸井いとい師長が入って来た。


「あ、はるかさん、お早う! 丁度良かった! ちょっと来て!」


 ドキッ!


「え? 私ですか?」


「そうそう! 貴女あなたじゃなくちゃダメなのよ〜」


「……?」……私がフリーズしていると糸井師長が……私の手を引き階段を登りながら……


「早く早く! 事情聴取があるのよ!」


 じ! じじょーちょーしゅ!?


「盗まれちゃったのよ! 貴女の……プリン!」


 ガ〜ン!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る