第11話 支離滅裂

 ……えっ?


 ……かなめさんの言葉は聴こえたが、意味が……判らない……。


 なに? この後、何処かに行くの?


 すぐに……すぐに帰って来るのよ……ね? だ、だって、の舞台、これからだし、要さんが何処かへ行っちゃったら……誰がガーベラーの代わりをるの? 要さん以外にガーベラーを演れる人は、居ないんだよ?


 あっ……そ……そうか……講演が……終わったら……か……。


 ……留学? ニューヨークに留学ってなに?


 え? 講演が終わったら……ニューヨークに……留学……?


 お別れなの? 講演が終わったら……お別れ? サヨナラ?


 イヤだ……!


 イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ!


 要さんが何処かへ行くなら、私も行く!

着いて行く!


 ニューヨークでも、宇宙の果てでも、海の底でも……何処でも着いて行く!


 だから……何処にも行かないで!


 ……要さんが言った言葉を即座に理解した自分と、認めたくない自分が脳の中で葛藤して、思考が滅裂になった。


「ちょっと……失礼します……」……と言って、トイレに駆け込んだ。


 トイレで私は『サム』に話しかけた。


 実は、私は漫画家になる……という夢を両親に反対され、登校拒否をしていた事があった。 ……その頃から、辛い事があると、親指に顔を書いて、それに話しかけて現実逃避をする『ひとり遊び』をしていた。 ……その、親指のキャラクターが『サム』だ。サムとなら、一心同体。 どんな事でも相談出来る、強い味方だ。 (拙作『臨床検査技師の『はるか』です!』をご参照下さい。)


 ……サム! ……私……どうしよう……。  この『カミツレのブーケ』の講演が終わったら……要さんが居なくなっちゃう!


「落ち着け真優……。 要くんは『ニューヨークに留学に行く』……と言っただけで『結婚する』……といった訳じゃない。 もしお前の気持ちが変わらず、要くんもお前が好きなら、留学から帰って来てからでも、お付き合いを始めれば良いじゃないか……」


 ……でも……私……自信無いし、離れちゃったら、そのままお別れになると思う……。 そんな予感がする。


「……『女のカン』ってヤツか? ……今迄、お前の女のカンが当たった事があったか?」


 な、無いけど……。 でも、今回は何故か判る。 これで別れたら……本当にサヨナラになっちゃう……って。



 ……!


 スマホが振動した。 ……はっしーからのラインだ。


『まゆ』

『先に言っておくね』

『私は』

『まゆの決断なら』

『どんな事でも』

『協力するよ!』

『だから』

『安心して』

『1つだけ答えて』


 ……私は、次の文字に凍り付いた!


『略奪愛……出来る?』

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