第8話 護身

 ……そんなある日……


 な! 何と! かなめさんからラインが来た!


『どうしても詰めたい場面があって、遥さんのお仕事が空いている時に、会いたいんだけど、ご都合を教えて頂けますか?』


 ドキ〜〜ッ!


 どどどどどどうしよう〜〜!


 はっしーに相談しなきゃ! ←懲りてない




「深く考えなくて良いんじゃない〜?」……と、はっしーはあっさりと言った。


「二人っきりで会うんじゃ無いだろうし、大丈夫だと思うけど、心配なら、私、付いてってやろうか?」


「え〜……良いの……?」


「その、良い男ってのも見てみたいし、まゆは男に対する免疫無いから、私の鑑定眼で吟味してあげるよ」


 ……と言ってくれたので、はっしーの休みの日と合わせて一緒に行く事にした。



 リハーサル当日……はっしーが車で迎えに来てくれた。 ……可愛らしい水色の軽自動車だ


「私、はっしーって『走り屋』だと思ってたのに、こんなに可愛いのに乗ってんの!?」


「ったりまえよ〜! 花も恥らう乙女だもん」……と言いつつ、助手席に回り込み、ドア開けてくれて「さっ、お姫さま! 乗って下さいまし」とおどけて頭を下げた。


 私も調子に乗って「くるしゅうないぞ」……と言って笑い合った。



 稽古場に到着すると、要さんが出て来てくれたので、早速、はっしーの紹介をした。


「こちらが、ラインでお伝えした、親友の橋本さん。 ……で、こちらが『劇団あぐり』の『かなめ 秀逸しゅういつ』さん」


「初めまして……かなめです。」


「橋本です……本日は貴重なリハーサルにお邪魔して申し訳御座いません」


 要さんが「いえいえ、第三者の目でご覧頂くのが大切なので有難いです。 何かお気付きになられたら、ご指摘をお願い致します」と言って、きちんとしたお辞儀をしてくれた。



 中では梅郷先生と奥様が、何かを真剣に話し合っていたが、私達の顔を見て、笑顔で挨拶をしてくれた。



 ……早速、お稽古が始まった。 はっしーは、少し離れた場所に座り、見守ってくれている。


 今日は『カモミーユ』と『ガーベラー』の付かず離れずの絶妙な間隔と、ガーベラーの殺陣たてを中心に稽古した。


 ……相変わらず、要さんの視線に胸が高鳴る!


 ここで問題が発生した。 要さんに見惚れ過ぎて台詞せりふを飛ばしてしまったのだ!


 ……梅郷先生が珍しく厳しい表情で私に近付いて来る。


 ……その時……!


 要さんが私を護るように……先生と私の間に割って入って来てくれた!


 し、秀逸さん! 貴方あなたは……!

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