第2話 挨拶回り

 勤務初日……私はある自信を持って出勤した!


 前日に、全てのフロアの配置をグーグル先生で調べ、丸々暗記したのだ! 


 新人たる者『郷に入れば郷に従え』……この教えを胸に、意気揚々と職員専用の入口に向かった。



 真新しい『はるか』の文字が下駄箱に貼ってある。 脱いだ靴を入れ、スリッポンを履いて検査室に向かった。



 検査室は、未だ鍵が掛かっていた。


 暫く待っていると、先輩の『深田』さんが出勤して来た。 ……同じ専門学校の先輩だが、学年が4つ違うので一緒になった事は無い。 ……最近見かけないが『七瀬なつみ』さんって女優さんに似ているが、よりボーイッシュで、ちゃきちゃきの江戸っ子っぽい。……と言っても、千葉の流山の人だ。


「お、早いね! 感心感心!」……と言ってくれた! 私は笑顔を返した。


「あたしより早く来られるなら、事務に合鍵、作って貰おうね……」……と言いながら、手早く装置のスイッチを入れていく。


 私は、その順番をメモした。


「おはよ。 早いな!」……検査室の五木いつき技師長だ。 何か、上野の西郷どんの銅像に似ているおじさんだ。


みやこは、今日は休みだから、朝のルーチン業務が終わったら、病棟に挨拶回りに行くよ」 


 都さんは、マイペースなのんびり屋さんで、結婚してお子様もいる。 ……こちらも最近見かけないが、女優の『和久井映見』さんに似た感じだ。



 ……私は、操作方法が判らない機械ばかりなので、二人の魔法の様な動きをスマホに録画させて貰った。



 ……朝のルーチンが終わり……


 『じゃ、挨拶回りに行こっか……』……と技師長に言われ「はい!」と良い返事をして立ち上がり、技師長の後に付いて歩き出す。


ず、事務室ね……」


 ……あれれ? 


 ……おかしい……方向が違う……?


 事務長と人事課長に挨拶する。 必死に笑顔を作るが、心臓はバクバク言っている!


「受付と外来は、まだ忙しいから、昼休みにしよう」


 ……ち、違う! 完全に私の記憶と、この建造物は異なっている!


 ……何だ?


 ……ここは……まさか……


 ……異世界!? 


 ……私、死んじゃった!?




「2階は、内科病棟ね。」


 ……「はい……」



 ……2階は整形病棟じゃ無いの?


 ……もう、めちゃくちゃだ。




 ……読者の皆様は、薄々勘付かれておられるかと存じますが……。


 ……それもその筈、ここは『町野中央・・病院』 ……私が見ていたのは『町野病院』!



 ……グーグル先生の『画像検索』で調べてしまった私は『うっかりさん』だった……。

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