第3話 竹馬《ちくば》

 ……折角せっかく憶えたつもりのフロア図が役に立たなかったのは、非常ひじょ〜に残念だったが、ここで落ち込んでも仕方がない。


 気を取り直して、腕まくりをした。


そのタイミングで技師長が……「食事行って良いぞ〜」と言ってくれた。


 何か、張り切って食事に行くって感じになってしまった……。


 深田先輩が笑顔で「はるかさん、今日食事用意して無いよね?」と聴いてくれた。 今日は、みやこ先輩が休みなので、それをご馳走になって良いそうだ。


 技師長に「お先に行って参ります」と挨拶して深田先輩と職員食堂に向かった。


 途中、放射線レントゲン科の前を通ると、ちょうど女性の技師さんが出て来た。


「お、橋本はっしー! うちの新人『はるか 真優まゆ』……」


 レントゲン室は午後から回る事になっていたので、この技師さんとはお初だ。


「宜しくお願い致します。 只今紹介にあずかりました、『遥』です、宜しくお願い致します」……と自己紹介すると……。


「そんな気を遣わないで〜! 私、同い年だから」


 ……なんてフランク〜


橋本はっしーは、夜間部だから、もう一年だっけ?」


「そうです! 私、多分留年する『橋本はしもと 知恵美ちえみ』……『はっしー』って呼んで!」


 ……これが、竹馬ちくばの友になる橋本はっしーとの出遭いだった。

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