第27話 再会
ようやく辿り着いた。
相変わらず誰もいないな。
「懐かしいな」
思い出の公園、初恋の女の子と出会った場所。
遊具は一新されていたが、あの傾斜の山のような、そう、楕円形のアイツだけは残っていた。
子供の頃は傾斜の所は登る時キツかったが、今は軽やかに登れている。
大きくなったな、と実感する。
平らなこの上に、あぐらをかいて座る。
あの時と違った景色に見えていた。
周りが新築になっていたり、新しい遊具ばっかりだからかな。
あのちょっと昭和な景色、二度と見れないと思うと寂しくなった。
いないな、あの女の子・・・。
都合が良すぎた、ここに来たら会えるなんて。
しかも容姿なんか面影があったとしても、変わってるはずだから分からないだろう。
バカだなぁ俺は。
立ち上がり帰ろうと山を下りようとしたその時だった。
「「えっ・・・」」
互いに目が合った。そして疑う。
「嘘」
「こっちの台詞」
そこにいたのは、よく知っている人。
「君だったんだな・・・気付かなかった・・・」
「私も、気付かなかった・・・」
「かえちゃん」
「しゅう君」
※
『君の名前は?』
『私の名前はかえちゃん』
『なんだそれ』
『君は?』
『僕はしゅう』
『シュークリーム?』
『違う、名前だよ!』
「
「そうだ」
俺はかえちゃんこと
ブランコに乗ってあの時と変わらず。
「気付かなかった」
「お互い様だ」
2人でクスクス笑う。
「
「はい」
そう、俺の名前は
改めて呼ばれるとドキッとする。
普段なら“君”の他に“つばき”って呼ばれてるから、新鮮に感じる。
「敬語、止めなさい」
「いや、先輩後輩でしょ?」
「幼馴染みなんだからもう良いんだよ」
「それもそうだな」
先輩後輩から、一気にあの日に巻き戻される。
俺はかえちゃんとここで出会ったんだ。
たった1日、一緒に遊んだだけなのに、俺はかえちゃんの事を好きになっていた。
その想いを高校生まで持ち続けた。
気持ち悪いだろうな。
「私、ここで出会った彼に会ったら、好きな人に振られた事を話して、たくさん愚痴って慰めてもらおうと思っていたんだ」
俺を最低野郎にしようとしていたんかい。
「まさかなぁ・・・あの時のしゅう君が、つばきだったなんて・・・信じらんない」
「俺も、あのかえちゃんが先輩かよ、と」
「かよって何だ?不満か?」
「いいえ」
不満はない。逆だ逆。
「かえちゃんが先輩で良かった」
「ぁっ・・・んっ・・・」
何か言いたかったのか、言葉に詰まって口ごもる先輩。
少し頬が赤い。
そんな反応したら、心が持たないわ。
「ねぇ・・・」
ブランコから下りた先輩は俺に向き合った。
俺もブランコから下りた。
「告白・・・やり直しがしたい」
身体中に電気が走ったような気がした。
俺はとっさに「ダメだ」と言った。
「ど、どうして・・・?」
不安になる先輩。
どうしてってそれは。
ちゃんと理由を言えば良いのだが、それは時間の無駄。
あの時の“告白”と今は、全く違う。
だから・・・
「かえちゃん」
「は、はい・・・」
そんな不安な顔をしないでくれ。
「ずっと好きだったよ、かえちゃん」
やっと、言えた・・・
彼女は不安な表情から驚きの表情となって、次はじょじょに泣き顔に。
優しく頭を撫でた。
「顔ぐしゃぐしゃじゃん」
「だって・・・だってだって・・・!」
すると先輩は、かえちゃんは、俺に抱きついてきた。
「ありがとう・・・ありがとう柊壱君」
「こちらこそ、かえちゃん」
優しく彼女を抱きしめた。
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