第27話 再会

 ようやく辿り着いた。

 相変わらず誰もいないな。

「懐かしいな」

 思い出の公園、初恋の女の子と出会った場所。

 遊具は一新されていたが、あの傾斜の山のような、そう、楕円形のアイツだけは残っていた。

 子供の頃は傾斜の所は登る時キツかったが、今は軽やかに登れている。

 大きくなったな、と実感する。

 平らなこの上に、あぐらをかいて座る。

 あの時と違った景色に見えていた。

 周りが新築になっていたり、新しい遊具ばっかりだからかな。

 あのちょっと昭和な景色、二度と見れないと思うと寂しくなった。


 いないな、あの女の子・・・。


 都合が良すぎた、ここに来たら会えるなんて。

 しかも容姿なんか面影があったとしても、変わってるはずだから分からないだろう。

 バカだなぁ俺は。

 立ち上がり帰ろうと山を下りようとしたその時だった。


「「えっ・・・」」


 互いに目が合った。そして疑う。


「嘘」

「こっちの台詞」


 そこにいたのは、よく知っている人。


「君だったんだな・・・気付かなかった・・・」

「私も、気付かなかった・・・」




『君の名前は?』

『私の名前はかえちゃん』

『なんだそれ』

『君は?』

『僕はしゅう』

『シュークリーム?』

『違う、名前だよ!』



かえでだから“かえちゃん”か」

「そうだ」

 俺はかえちゃんこと門倉かどくら先輩とブランコの所に移動した。

 ブランコに乗ってあの時と変わらず。

「気付かなかった」

「お互い様だ」

 2人でクスクス笑う。

柊壱しゅういち君」

「はい」

 そう、俺の名前は椿原つばきはら柊壱。

 改めて呼ばれるとドキッとする。

 普段なら“君”の他に“つばき”って呼ばれてるから、新鮮に感じる。

「敬語、止めなさい」

「いや、先輩後輩でしょ?」

「幼馴染みなんだからもう良いんだよ」

「それもそうだな」

 先輩後輩から、一気にあの日に巻き戻される。

 俺はかえちゃんとここで出会ったんだ。

 たった1日、一緒に遊んだだけなのに、俺はかえちゃんの事を好きになっていた。

 その想いを高校生まで持ち続けた。

 気持ち悪いだろうな。

「私、ここで出会った彼に会ったら、好きな人に振られた事を話して、たくさん愚痴って慰めてもらおうと思っていたんだ」

 俺を最低野郎にしようとしていたんかい。

「まさかなぁ・・・あの時のしゅう君が、つばきだったなんて・・・信じらんない」

「俺も、あのかえちゃんが先輩かよ、と」

「かよって何だ?不満か?」

「いいえ」

 不満はない。逆だ逆。

「かえちゃんが先輩で良かった」

「ぁっ・・・んっ・・・」

 何か言いたかったのか、言葉に詰まって口ごもる先輩。

 少し頬が赤い。

 そんな反応したら、心が持たないわ。

「ねぇ・・・」

 ブランコから下りた先輩は俺に向き合った。

 俺もブランコから下りた。


「告白・・・やり直しがしたい」


 身体中に電気が走ったような気がした。

 俺はとっさに「ダメだ」と言った。

「ど、どうして・・・?」

 不安になる先輩。

 どうしてってそれは。

 ちゃんと理由を言えば良いのだが、それは時間の無駄。

 あの時の“告白”と今は、全く違う。


 だから・・・


「かえちゃん」

「は、はい・・・」


 そんな不安な顔をしないでくれ。


「ずっと好きだったよ、かえちゃん」


 やっと、言えた・・・


 彼女は不安な表情から驚きの表情となって、次はじょじょに泣き顔に。

 優しく頭を撫でた。


「顔ぐしゃぐしゃじゃん」

「だって・・・だってだって・・・!」


 すると先輩は、かえちゃんは、俺に抱きついてきた。


「ありがとう・・・ありがとう柊壱君」

「こちらこそ、かえちゃん」


 優しく彼女を抱きしめた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る