第26話 悩んだあげく

『ふーん』

「なんだよそれ」

 俺ははやしに電話で恋の相談をしていた。

『君はモテるね』

「違うね」

『謙遜しなくても』

「お前の目は節穴だな」

『めっそうもない、見る目はある方だよ』

 全く、林と話すと前に進みにくい。

 ふざけないでくれ。

『さて、どうしたいの?』

「ん?」

『だから、君はどうしたいの?』

 どう、したい、か・・・。

水上みなかみさんが言っていた“全員振る”?』

 それは・・・。


『君には、君の心には、一体誰がいるんだ?』


 改めて聞かれた。

 浮かぶのはいつも・・・。


『それを伝えたらどうかな?』


 見透かされてる・・・参ったな。


「ありがとな、林」

『お役に立てたなら光栄だよ』

「たまにはな」

『たまに、は余計だね』

 2人して笑い合った。



 俺の中にはまだあの初恋の女の子がいる。

 色褪せる事のない、大切な大切な人。

 だから俺はその事を女子3人に送った。


 これで俺は全員振る事になる。


 やっぱり、良い友達、良い後輩、良い先輩、でいて欲しい。

 冴木さえきとは生徒会仲間であり、クラスメートとして、水上はよき理解者として、門倉かどくら先輩は姉貴のような頼りになる人として、これからも良好な関係でありたい。

 そう願って、とある準備を始める事にした。



 そうだったんだ・・・

 メッセージを読んでショックを受ける私、冴木 さくら

 もう届かない・・・ダメなんだ・・・。

 初恋には、勝てない・・・。

 ベッドの上で膝を抱えて、顔を埋めて泣いた。



 これは・・・

 先輩、本当に全員振ったのかもしれない。

 そう、確信した私、水上 陽葵ひなた

 冷静に受け止める自分自身に驚く。

 こうなったら、仕方がないなぁ・・・。

 ポロッ・・・あれ?何で?

 溢れた涙が、私の感情を爆発するように、止めどなく流れた。



 驚く私、門倉 かえで

 これは・・・無理だな・・・

 ふと、外の様子を窓越しに見る。

 空は青く晴れ渡り、本当に冬なのか疑った。

 どこか、吹っ切れた・・・。

 告白したあの日、たくさん泣いたからかな?

 良かった、彼を好きになって・・・。



 1人寂しくブランコに乗って、力なくこいでいた私。

 その時に出会ったあの男の子。

 あの男の子との時間は掛け替えのない時間で、ずっとこのまま時が止まれば良いのにと思った。

 でも、私は遠くから帰省していた為、帰らなければならない。

 それが悲しかった。

 今、どうしてるかな?

 会いたいな・・・。

 でも、私は好きな人が出来た。

 君に雰囲気が似ている男の子。

 でも、その人は他に好きな人がいるらしく、振られてしまった。

 はぁ・・・溜め息を1つ。

 あの思い出の場所に行けば、今なら会えるかな?

 そうしたら、いっぱい愚痴を聞いてもらって、慰めてもらおう。

 よし、決めた。

 私は気持ちを切り替えて、出掛ける準備を始めた。

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