第22話 寒くなってきた

 もう師走かぁ・・・。

 手が悴む、息を吐くと真っ白、温かい所から出たくなくなるこの季節。

 そんな時、今日は来年発足する新生徒会メンバーとの初顔合わせ。

 本当に門倉かどくら先輩・三葉みつば先輩・はやしが居なくなるのかぁ・・・。

 そして俺が生徒会長、か。

 やっぱり引き受けなければ・・・なんていうタラレバがよぎる。

 あーダメだ、しっかりしろ。

 自分で自分に喝を入れていると、ノックの音がして誰かが中に入って来た。

「「失礼します」」

 この子らは・・・あぁ、なるほど。

「お疲れさん」

「お疲れ様です、会長!」

 ハキハキと元気良く挨拶をしたのは、1年の会計担当、籠宮こみや有楽太うらた

 俺よりも少し身長は高く、頬にちょっとだけそばかすがあって、愛嬌ある笑顔が憎めない。

 見た目はおふざけ好きのクラスに必ずいるムードメーカーな感じの男子生徒。

 演説会の時もウケを巧みに繰り出し笑いを誘いながら引き込んでいたから、話は上手いんだろう。

「お疲れ様です」

 籠宮の隣には、眼鏡をかけた髪型は三つ編みの女子生徒。

 書記担当、風見かざみ朝美あさみ

 身長は160センチはあるだろう。目がキリッとしているため眼光は鋭い印象である。

 しかし、声は可愛らしく演説会ではゆっくり丁寧に話していた。

「まあ、そこら辺に座って」

「「ありがとうございます」」

 長テーブルに窓側と廊下側にそれぞれ椅子が2つあり、2人は廊下側に座った。

「もう少しで冴木さえき、来るかなぁ・・・」

 いつもは三葉先輩がお茶を淹れてくれるが本人がいないので、俺が淹れるしかない。

 という事で、食器棚から湯飲みを3つ取り出した時。

「会長、私がやります」

「うおっ!?」

 背後に気配なくいた風見。

「出来るのか?」

「家でよく淹れてます」

「じゃあ、頼む」

「はい」

 バトンタッチするように風見に交代。

 手際良くやっている、慣れてるんだな。

「風見ちゃん、良いとこの家らしいっすよ?」

 話しかけてきた籠宮。

「へぇー」

 俺は窓側の方に座る。目の前は籠宮だ。

「副会長、どこに?」

「職員室」

 生徒会担当の土谷つちや先生って話が長いから嫌なんだよ。

 簡潔に言ってくれって感じだ。

 きっと冴木は今、長話に付きっきりで抜け出せないのだろう。

「土谷先生の所で足止めされてるはずだ」

「あの先生の授業、5分オーバーですからね」

「そうそう、長過ぎだよな」

 思い出しただけで疲れがきた所でドアが開いた。

「ごめん、遅くなって!」

「冴木」

「土谷先生の話、疲れた・・・」

 あー、やっぱりな。

「ほれ、座れ」

「うん」

 冴木は俺の隣に座った。

「お待たせしました、お茶です」

 風見は俺、冴木、籠宮の順にお茶をテーブルに置いた。

「ありがとう」

 早速一口飲むと美味かった。

 三葉先輩と同格だ。

「美味しい・・・染みるぅ」

 喉が渇いていた冴木には丁度良かったのだろう。

「いやーお茶は良い」

 籠宮もお気に召したようだ。

 数分後、風見は自分の分のお茶を持って席に着いた。

「ありがとうございます、喜んで貰えて良かったです」

「これからは私か風見さんがお茶担当だね」

「はい、喜んで」

 この後、俺達は改めて自己紹介をした。

 そして4人で談笑に花を咲かせたのだった。



「集まれて良かったね」

「そうだな」

 後輩2人は帰った。というか帰した。

 俺と冴木で後片付けをしている。

「来週でラストだよ?」

「うん、最後だ」

 来週は冬休み前に引き継ぎ式みたいな事をやる。

 この時にあの3人とは最後となる。

「水入らずで、先輩2人と林君と一緒に打ち上げしたら?」

「多分、門倉先輩が考えているから、あえて俺は動かない」

「ふふ、なんか分かる」

「だろ?」

 サプライズ大好き、奇想天外なのがあの人なんでね。

「寂しい?」

 冴木に聞かれて初めて“寂しい”事に気付いた。

 ドライな心だと思っていたら、そうではないようだ。

「寂しい・・・かな」

 ちょっとだけ曖昧にした。

 本当に寂しいです、なんて恥ずかしいからな。

「その寂しいって・・・」

 冴木は俺の目をじっと見て。


「門倉先輩に対して、かな?」


 ドクン・・・


 なんで大きく心臓が鼓動したのか?

 分からない、でも、無意識でなら、心の奥底では、まさか。

「どうした冴木?」

 すると冴木は慌て出し。

「はっ!ごめん、忘れて!」

 苦笑してまた作業に取り掛かった冴木だった。

 なんだか、何かに焦っているように見えたが、気のせいか。



 変な事を聞いてしまった。

 でも図星のようだった。

 はぁ・・・私、焦りすぎ・・・。

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