第20話 えっ、何で?

 球技大会が絶賛開催されている。

 今は昼休憩である。

「疲れたー」

「何でだよ?」

 俺は水上みなかみと一緒に食堂の隅で昼食をとっていた。

「私頑張ったから」

「おいおい」

 水上は冗談のような本気のようなトーンで言いつつ、菓子パンを頬張り牛乳で流し込む。

「その量で足りるのか?」

「足りちゃうのが、陽葵ひなたちゃんなのであーる」

 ドヤ顔すんなや。

「そういう先輩はお腹いっぱいで眠くならないんですか?」

「大丈夫、午後も試合あるから」

 しっかり食っとかないと倒れそうと思って、おにぎりを3つ作ってきた。

 具は鮭、梅、ツナマヨ。

「先輩って料理男子」

「何でもかんでも、なんたら男子って言うな」

「えー分かりやすいじゃないですかー」

「当たり前の事だってあるだろう」

 いちいち、○○男子、○○女子って言葉を言わんでほしい。

「楽しそうだな、仲間に入れてくれないか?」

 えっ、何で?

門倉かどくら先輩だー!どぞどぞ!」

 水上は隣の椅子をポンポン叩き、それを見た門倉先輩はそこに座った。

「君だな、水上さん」

「はい、そうでーす!」

「彼から聞いている、とても明るい子だと」

「いやーそれほどでもぉ~」

 何故そこで照れる?

「門倉先輩、ご飯は?」

われはこれだ」

 バンダナで包まれた弁当箱の蓋を開ける。

 彩り豊かな弁当箱が現れた。

「うわぁ~、凄い凄い!」

 弁当箱の半分はご飯が敷き詰められていて、胡麻がまぶされ梅が1つ真ん中にあった。

 残り半分はカップを使って、きんぴらごぼう、ほうれん草のお浸し、キュウリの漬物という和と、一口サイズのハンバーグという洋があった。

 そして隅には。

「あれ?真っ赤なこれは?」

「ん?麻婆豆腐だ」

 あー、やっぱり。さすが、辛い物好き。

「一口、良いですか?」

 水上やめろ、後悔すんぞ。

「あぁ良いとも!」

 すると水上は鞄から袋に入ったプラスチックのスプーンを取り出した。

「水上、持ち歩いてんのか?」

「はい、友達のご飯で食べたいなーと思った時に使えるように!」

 食いしん坊だな。

 水上はスプーンの先の所にちょっとだけ麻婆豆腐を掬い。

「んー、鼻からでも伝わる辛さ」

 と言いながら、パクッ。

 すると、みるみる目を大きく見開き、顔を赤くして。

「かっ、からーい!!!」

「あはは、愉快愉快」

 門倉先輩、鬼。

「やっと見つけた」

冴木さえき

 笑顔の冴木がフラッとやって来た。

「私もまぜて?」

「はい、冴木先輩♪」

 水上は門倉先輩の反対側の椅子をポンポン叩き、それを見た冴木はそこに座った。

「いやー、美女揃い、目の前の先輩は罪だなぁ」

 ニヤニヤしながら水上は言った。

「おいおい」

 俺はふてくされた顔になる。

 しかし心は違う。

 美女揃い・・・否定はしない。

 なんだかなぁ、俺が3人を面接してるのか、3人が俺を面接してるのか・・・なんて。

 変な事を考えそうになる前に。

「お前にはもったいないから、失礼邪魔する」

 救世主・はやしが乱入してきた。

「私も私も~♪」

 と、三葉みつば先輩もフワッと登場。

 林はさりげなく空いている椅子を引き一言。

、どうぞ」

「ありがとう、


 ん?


「林、今、なんて?」

りん、今、なんと?」


 俺は門倉先輩と目が合ってから、2人を見た。


「あれ?言ってなかったか?」

「彼女のみっちゃんとしか」

 俺と林の会話。


かえでちゃんに言ってなかったかな?」

「彼氏のはーちゃんとしか聞いとらん」

 と門倉先輩と三葉先輩の会話。


 この4人の様子をじっと見ていた水上が言った。

「えっ、お2人はお付き合いを?」

 すると、林と三葉先輩は互いに目を合わせて笑顔で。

「「そうでーす!」」

 マジかー!?


 知らなかった事をしれて、良かったです。

 昼休憩の時間、残り15分しかなかったが、ギリギリまで6人で話したのだった。

 珍しい事も起こるもんだな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る