第19話 光景を見て

 いない・・・先輩、帰ったかな?

 私、水上みなかみ陽葵ひなたは、校内をうろうろしていた。

 今は教室にいて自分の席で休んでいる。

 どこにもいないなら、諦めるしか・・・。

「あっ・・・」

 窓の外を見ると、とある2人が校門付近で一緒にいる所が目に入った。

 街灯で照らされた2人・・・。

 目を細めて見ると、ハッとした。

「先輩と・・・冴木さえき先輩だ・・・」


 先を越された・・・。


 きっと、校内をうろつくより校門で待つ方が賢いに決まってる。

「はぁ・・・一緒にダンスをと思ったのに」

 私は机に突っ伏して項垂れた。



「まっ・・・っ・・・」

 私、門倉かどくらかえでは言葉が出なかった。

 だって冴木さんと合流してしまった彼を呼び止める事は出来ない。

 昇降口で私は彼を見つけたが、後ろから驚かそうと思って校門の所まで尾行していた。

 まさか校門の街灯下に冴木さんがいるなんて知らなかった。

 2人はそのまま一緒に下校してしまった。

「声をかけとけば良かった・・・」

 物凄い勢いで後悔が襲ってくる。


「早く・・・言わなきゃ・・・」


 必ず、誰よりも先に、言わないと・・・。



 言われた通りに、冴木に連絡を入れた。

 数分後、返事がきた。

「どれどれ」

 画面を見ると。


『今日はありがとう』

『いえいえ』

『ちゃんと考えた?』

『何を?』

『どうしてこうかな?』

『はい?』

『はぁ、切り替えよう』

 全く分からん。

 この後は他愛ない会話をしばらく続いた。



 好きだから、連絡して欲しくて、お願いをした。

 本当は自然と彼から連絡がくると嬉しいのに。

 そんなことを考えながらベッドで仰向けになる私、冴木 さくら

 このままの生ぬるい関係から、前進出来ないものか。

 彼の中には気になる人は他にいる。

 振り向かせるにはどうしたら?

 そして、もう1つ。

 本人に聞いてはいないけど、私の勘は当たる自信はある。

 その勘とは、こう。


 彼の中で、忘れられない人がいる


「なんか、そんな気がする」


 どんな人なのかな・・・

 なんだか、負けてしまいそうだな・・・

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