第11話 長期休みをどうするか
夏休みが来週から始まるという事で、その期間にやる宿題がわんさか配られた。
俺は渡されたその日から順次片付けた結果、残ったのは読書感想文と自主研究のみとなった。
さて、長期休みをどうするか?どう過ごすか?
全く思い付かない。
このままでは、家でゴロゴロして軽くランニングして1日が終わってしまう。
友達が多ければ良いのだが、数えるくらいしか友達はいない。
いっそのこと友達いないと言っても差し支えない。
とりあえず、家でゴロゴロを基準にその日を過ごそうと思う。
あんまり考えると混乱してしまうから深く考えない事にした。
※
「せんぱーい!」
「
元気いっぱいの水上と廊下で遭遇。
「捻挫治りましたね」
「ああ」
「エレベーター快適だったなぁ」
「こら」
「えへへ♪」
やっぱり楽して教室に向かいたかったのか。
1年は3階だからな。疲れているとキツいよな。
因みに、2年は2階、3年生は1階と、学年が上がるにつれて楽になるわけだ。
「ところで先輩」
「なんだ?」
「夏休みの予定は?」
「真っ白」
「私は部活あるんですが、休みの日なら相手しますよ!」
人懐っこい笑顔でお誘いがきた。
「ずっと家にいてもダメだし、お言葉に甘えようかね」
「やったー!」
ピョンピョン飛び跳ねて喜ぶ後輩を見て、可愛いなぁと思った。
「また連絡しますから、秒で反応して下さいね!」
「りょーかい」
「ではまた!」
水上はピューンとどこかへ走り去った。
廊下は走ってはいけないって、小学校の時から習ってんだろ?
良い子のみんなは真似せず、廊下は右側を歩きましょう。
※
「どうしたの?」
「いやー・・・」
放課後の教室。俺と目の前の女子生徒以外、誰もいない。
その女子生徒というのは
俺の顔をまじまじと見ている。
「難しい顔してるね?」
「あはは」
どうしたものか。言えば楽になるのにな。
断られるのが、なんだか、怖い。
ビビる自分に多少なりとも驚きつつ。
「用件を言えないなら帰るよ?」
「あー言う、言うから!」
何焦ってんだよ!
「ふふ、告られちゃうのかな」
「えー、違う方向と言いましょうか」
「違う方向?お願いとか?」
す、鋭い。さすがです。
「断られると思っている案件だな」
「ぐふっ!」
「図星だぁ」
ニコニコ笑う冴木。この子は本当に・・・勝てん。
「実は生徒会仲間の
「ふむ、それで?」
続きを促され、その流れに乗っかる。
「俺、現生徒会長の
黙って聞く冴木の様子を見て、俺は意を決して伝えた。
「冴木・・・副会長・・・なってくれ」
言葉に詰まりながらも、はっきりと言った。
断られたら他をあたろう。
吹っ切れたのか、俺の心と体は軽くなった。
暫くすると。
「良いよ」
えっ・・・
「一緒に良い学校にしてこ!」
えっ、えっ、えっ・・・
「しどろもどろになってるよー!」
「ん、あぁ!悪い悪い!」
驚き過ぎて我に返ると慌ててしまった。
「ありがとな」
「いえいえ」
これで、俺は、安泰の生徒会に出来そうだ。
「冴木、夏休みにお礼をさせてくれ」
「えー?いいよいいよ」
「頼む、俺の気持ちとして納得できんから」
生徒会に自分の時間を使ってくれるんだから、お礼しないと罰当たる気がするから。
「分かった、じゃぁ・・・」
勿体ぶる冴木。俺の出来る範囲で。
「お祭り」
「?」
「一緒にお祭り、見に行こ?それでちゃら♪」
俺の夏休みにまた予定が増えた。
しかもピンポイント。
お祭り、デート・・・。
ちょっとだけ心が跳ねた。
※
「なるほど、冴木さんが副会長に立候補・・・悪くない」
あの後、生徒会室に寄ると先輩がいたので冴木の事を話した。
祭りに関しては省いて。
「2人が必ず当選出来るように、全力でサポートをしようではないか!」
あー、燃え出した。
「
「はい、当選すれば安泰です」
「ふっ」
何故そこで鼻で笑うの!?
「んー!気分が良い!今日はぐっすり眠れそうだ!」
「逆に興奮して寝れないんじゃ」
「あはは!それもあり得るな!」
先輩は愉快に笑って体を震わせる。
椅子に腰掛けて足もバタバタしている。
器用に笑うなぁ先輩。
「なぁ?」
「はい」
落ち着いた所で。
「夏休み、一緒にどうだ?」
「へっ?」
間抜けな声を出してしまった。
「一緒にまた出掛けないか?」
先輩からのお誘い第2弾!
「良いですよ」
「よしっ!」
嬉しそうだ。
「後で連絡する!」
椅子から立ち、鞄を持った先輩。
「んじゃまたな!」
そう言って出て行った。
「お疲れ様でしたー」
取り残された俺は・・・呆然として数分硬直したのだった。
今年の夏休み、楽しそうだな。
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