第10話 あー痛かった
体育祭という1学期の山場を越えて数日。
筋肉痛がまだ続いていた。
またリレーでゴール後に躓いて盛大に転び、足首を捻挫してしまった。
痛みがあるから歩きづらい。
エレベーター使えるだけ良いが、それに便乗するこの隣の後輩。
「たまたま先輩見たんで!」
「嘘だな」
「えへへ♪」
鞄を持ってくれてるだけ有難い。
何にもしないで乗られるとちょっとイラッとくる。
ピンポーンと鳴り、ドアが開いた。
「ありがとな」
「はい!ではまた!」
鞄を受け取り、水上はそのまま上へ。
て・・・えっ?降りないんかい!
※
「大丈夫?」
「大丈夫に見えるか?」
意地悪をしてみる。
「ごめん」
あれ?冴木、シュンとなった!?
「あー、いや、すまん」
「ふっ」
えっ
「意地悪したのは分かってるよ」
「うわぁ・・・参りました」
「はい、どうぞ」
にこやかに冴木は俺の机の上に何か置いた。
「弁当?」
「うん、歩くのまだ大変なんだから暫くは作るよ」
「ありがとう」
昼が楽しみだな。
※
「へぇー、冴木さん優しい」
「だろ?」
「まっ僕は自分で作るし、誰かさんと違って食堂で無駄遣いはしない」
「
中性的な綺麗な顔をしているこの人が林である。
身長は俺と同じくらいかちょっと高い。
「そんで何?」
「結局、会長なる方向になった」
「ふーん」
口の端を上げた林。
何か嫌な予感がする。
「林・・・お前まさか・・・」
「ん?」
とぼけんなよ。
「今年度で生徒会辞める気か?」
すると、にやーと笑った林はこう言った。
「そうだよ?副会長にはならない」
「やっぱりな」
嫌な予感が的中しちまった。
「3年のラストは部活に集中したいし、キャプテン任されてるからね」
そうだった。
「悪いね」
「もういいよ」
にこにこの林、ムカつく。
「まっ僕なんかより他にいるでしょ?」
「誰だよ?」
「そうだなー・・・」
数十秒考えてから。
「冴木さんなんか良いんじゃない?」
「えっ?」
「お前と相性良いと思うけどなー」
冴木・・・か。
「でもなぁ」
「言えば、意外とすんなりいきそうだけど?」
「何で分かる?」
「それは」
一呼吸吐いて。
「お前の事を気にかけてるように見えるから」
「は?」
なんだその返答。
「まず話してみな!」
「あのなー」
「はい、この話はおしまい!今度は僕のみっちゃんの話をさ」
「惚気んな!」
林の言うことを聞いて、後で冴木に話してみよう。
それにしても、弁当美味い。
これを捻挫が治るまで作ってくれると思うと嬉しくなった。
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