第10話 あー痛かった

 体育祭という1学期の山場を越えて数日。

 筋肉痛がまだ続いていた。

 またリレーでゴール後に躓いて盛大に転び、足首を捻挫してしまった。

 痛みがあるから歩きづらい。

 エレベーター使えるだけ良いが、それに便乗するこの隣の

「たまたま先輩見たんで!」

「嘘だな」

「えへへ♪」

 水上みなかみはちゃっかりしているなー。

 鞄を持ってくれてるだけ有難い。

 何にもしないで乗られるとちょっとイラッとくる。

 ピンポーンと鳴り、ドアが開いた。

「ありがとな」

「はい!ではまた!」

 鞄を受け取り、水上はそのまま上へ。


 て・・・えっ?降りないんかい!



「大丈夫?」

 冴木さえきが俺の事を心配して声をかけてきた。

「大丈夫に見えるか?」

 意地悪をしてみる。

「ごめん」

 あれ?冴木、シュンとなった!?

「あー、いや、すまん」

「ふっ」

 えっ

「意地悪したのは分かってるよ」

「うわぁ・・・参りました」

「はい、どうぞ」

 にこやかに冴木は俺の机の上に何か置いた。

「弁当?」

「うん、歩くのまだ大変なんだから暫くは作るよ」

「ありがとう」

 昼が楽しみだな。



「へぇー、冴木さん優しい」

「だろ?」

「まっ僕は自分で作るし、誰かさんと違って食堂で無駄遣いはしない」

はやし、やめろ」

 中性的な綺麗な顔をしているこの人が林である。

 身長は俺と同じくらいかちょっと高い。

「そんで何?」

「結局、会長なる方向になった」

「ふーん」

 口の端を上げた林。

 何か嫌な予感がする。

「林・・・お前まさか・・・」

「ん?」

 とぼけんなよ。

「今年度で生徒会辞める気か?」

 すると、にやーと笑った林はこう言った。

「そうだよ?副会長にはならない」

「やっぱりな」

 嫌な予感が的中しちまった。

「3年のラストは部活に集中したいし、キャプテン任されてるからね」

 そうだった。

「悪いね」

「もういいよ」

 にこにこの林、ムカつく。

「まっ僕なんかより他にいるでしょ?」

「誰だよ?」

「そうだなー・・・」

 数十秒考えてから。

「冴木さんなんか良いんじゃない?」

「えっ?」

「お前と相性良いと思うけどなー」

 冴木・・・か。

「でもなぁ」

「言えば、意外とすんなりいきそうだけど?」

「何で分かる?」

「それは」

 一呼吸吐いて。

「お前の事を気にかけてるように見えるから」

「は?」

 なんだその返答。

「まず話してみな!」

「あのなー」

「はい、この話はおしまい!今度は僕のみっちゃんの話をさ」

「惚気んな!」


 林の言うことを聞いて、後で冴木に話してみよう。

 それにしても、弁当美味い。

 これを捻挫が治るまで作ってくれると思うと嬉しくなった。

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