第9話 託す決意
「見合った奴がいないな・・・」
私、
まず最初に同級生を隅々まで見て、会話したがピンと来なかった。
だが、右腕になるだろうと思って、副会長に誘ったのが、同じクラスの
最初はやんわり断られたが、粘って押したら「根負けした、良いよ」と承諾してくれた。
そこから仲良くなるのは早かった。
今では頼りになる副会長で、彼女にして大正解だと思っている。
次に1学年下の1年生を見てみた。
パッとしなかった。
声をかけてみても「自分には合わない」「忙しそう」「部活があるので」と、なかなか手強く感じた。
このままでは異常事態に陥りかねん。
そう思い焦っていたある日。
1年生の偵察をしにまた行くと、廊下で何やら揉め事が起こっていた。
近づいて見ると。
男子2人が取っ組み合い寸前の剣幕だ。
何があった、と言おうとしたその時。
「お前らいい加減にしろ」
教室から出てきた男子生徒。
高身長で顔は眠たそうな感じで、頭をガリガリかきながらの彼。
「でも、コイツが!」
「いや、お前だろ!」
「うるさいなぁ」
仲裁に入った彼は、右の彼にこそこそと耳打ち。次に左の彼にも同じ事を。
すると2人は青ざめた顔になり「「悪かった」」とだけ言って、肩を落としてそれぞれ教室に戻って行った。
何がなんだか分からない。何が起こった。
「やっぱスゲーな!」
「別に」
友達と会話しながら彼も教室に戻って行った。
コイツだ、コイツなら、託せる。
私は放課後、昇降口で待ち伏せをした。
暫くしてようやく彼が現れた。例の友達と一緒に。
よし、今だ。
「そこの君」
「はい?」
間抜けな顔の彼。
「うっわ!噂の美人先輩!」
興奮しているその友達。
「何かしたんか?」
「いや、何も」
警戒されているのだろう。
「ちょっと
「えっ?何でですか?」
「良いから、頼む!」
私は頭を下げた。
「おっと、顔上げて下さい」
凄く慌て始めた彼。
「お願い・・・話がしたいの・・・」
ダメなら、また日を改めて。
「分かりました」
よっしゃ!
「ありがとう!ではそこの友達、彼を借りる!」
「うっす!んじゃまたな」
「おう、じゃあな」
私は彼と一緒にある場所に向かった。
※
今日は運動部は休みという事で、体育館に来た。
本当は生徒会室と思ったが、階段を上るのが面倒と思い、昇降口から近いここにした。
「それで何ですか門倉先輩?」
後輩君はステージの所に座り、足をぶらぶらしている。
「君は今日、揉め事を解決したようだが」
「見てたんすか」
「何を耳打ちしたんだ?」
まずあの揉め事について聞いてみた。
「あー、あれは簡単ですよ」
彼は頭をガリガリかく。
「右の奴には彼女が幻滅するぞと言って」
「えっ」
「左の奴には手をあげる喧嘩になったらお前のモテ期終わるぞと言いました」
「なんと」
「男はほぼ単純なんで」
男の心理を分かっているからこそ、弱い所をつついたわけか。
「そうかそうか・・・」
うん、悪くない。
「なあ、生徒会に入らないか?」
「へっ?」
「私の為に働け」
「こりゃ参ったな」
この日から私は彼を生徒会に入れるべく何度も口説いた。
しかし彼は首を縦に振ることはなかった。
※
「あれが理由でしかー」
「ああ」
「でも俺は断り続けて先輩来なくなったから平和に過ごしていたら、クラスで担ぎ上げられて当選という・・・」
「ふふ」
いたずらっ子な顔をしている先輩。それはそうだ。
「当選後に友達から聞きました。俺へ直接がダメなら外堀を埋める作戦に出たという」
「苦労したが作戦は成功したから良かった良かった」
「参りました、敵いません」
本当に先輩には敵わない。
「私の目に狂いはない。君しかいない」
真っ直ぐ俺の目を見る門倉先輩。
「君なら、大丈夫」
真剣に見つめる門倉先輩。
俺は負けそうになるが踏ん張る。
「俺・・・」
「断らせん」
・・・はぁ
「参りました」
「てことは?」
「お引き受け致します。当選したらですが」
「よく言った」
根負けしてしまった。
「君の推薦人に我がなる、安心しろ」
「はい」
俺は門倉楓に頭が上がらない。
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