第8話 たっぷり盛り盛り
「へいおまちぃ!」
「「ありがとうございます」」
屋台のラーメン屋にいる。
辺りは真っ暗、会社員の人達が駅から出てきて足早に去って行く。
そんな喧騒の中で、俺と先輩は美味しそうなラーメンに釘付けで、周りが気にならない。
俺が頼んだのは塩豚骨バターという、カロリー高めで、野菜は盛り盛りにしてもらった。
一方の先輩が頼んだのはトマトチーズ味のラーメンで、そのチーズの量は半端なかった。バーナーで軽く炙ってもらった為、見た目は美味そうに見える。
しかし、その見た目はあれよあれよと地獄絵図と化する。
先輩はこれでもかと言わんばかりに、七味唐辛子をたっぷりかけた。胡椒はちょっぴり、ラー油は一滴。
「先輩、チーズと七味、喧嘩は?」
「しないな」
「味は?」
「分かるさ、食べてみろ」
「結構です」
先輩の味覚を疑ってしまうが、本人が分かれば良いかと結論する。
「「いただきます」」
それぞれ美味しく頂きました。
何辛か分からないあのラーメンを美味しそうに食べる先輩を横目で見て思う事。
この人と結婚したら味覚感覚狂いそう、未来に生まれるであろう先輩の子供、真似しちゃダメだよ。
本気で思いました。ちゃんちゃん。
※
「「ごちそうさまでした」」
「あいよー!また来いよ!」
屋台のラーメン屋を後にして、2人でのんびり歩く。
「少し寄ってこうか」
「はい」
近くにあった自販機の直ぐ横のベンチに座った。
「んー!またあのラーメン食べに行きたいな!」
「ですね、美味かったんで」
本当に美味かった。常連になりそうだ。
「だろ?休日にたまに行くんだ、あの屋台」
胸を張って自慢するように話す先輩。
「へぇー」
「月に1、2回だがな」
高校生ですからね。
「先輩も一人暮らしでしたか?」
「そうだぞ」
初めて知った。
「なんでまた」
自然な流れで質問してみたら。
「自立の一歩を踏み出せ、だとさ」
カッコイイ両親。
「というのは嘘。自分から言った」
先輩がイケメンでした。
「実家から通ってる高校は遠いんだ。だから、近くにと思って、一人暮らしを提案したのさ」
「へぇー」
「高1の時は毎週母が買い物したやつを冷蔵庫に入れて、身の回りの掃除洗濯料理を
1年で家事習得とか凄い。
「君も一人暮らしだったな?」
「まぁはい」
やっぱり来たよ、俺の事。
「何故一人暮らし?」
「それは・・・」
言葉に詰まった。
なんと言えば良いのか、分からない。
「言いたくないなら話さんでいい」
先輩は俺の気持ちを悟ってくれたようだ。
ありがとうございます。
少しだけ沈黙が流れた。だが、不思議と帰りたいとは思わなかった。
「先輩・・・」
「なんだ?」
一呼吸をして。
「先輩は・・・生徒会みんなは、何故俺に生徒会長になって欲しいと思っているんですか?」
理由は知りたいと思って、今ぶつけてみた。
一方的に「生徒会長になってくれ」とずっと言われてきたから。
今しか聞けないとも思った。
ここを逃すと、もう聞けないと思ったから。
「ふぅーむ・・・」
先輩は何と言えば良いのかという顔で、暫く考え始めた。
待つこと10分。俺には長く長く感じた。
「それはだなぁ・・・」
「はい」
鼓動が早くなっていく。
「君しかいない、そう思ったからさ」
とてもシンプルな理由だった。
「生徒会に入って2年、その内の1年間。生徒会長への準備をしながら、その次の候補を探していた」
そうだったの!?
「同級生と下級生を片っ端から見て、目星をつけて、じっくり見てきた」
「先輩、探偵に向いてるような気が・・・」
「ちょっと黙れ、話を最後まで聞け」
「すみません」
この人、脳みそ何個あんの?使い分けしてんのか?というくらい、ハイスペックな行動をしていたのかと思った。
「それである日、君を廊下で見かけた」
「ああ、あれですね」
「ああ、あれだ」
俺と先輩が初めて出会った日。
あの日がきっかけで生徒会に誘われて今があるのだ。
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