第4話 ある日の事

 自分の部屋でゆっくりしながら、今日の水上みなかみの言葉を思い出す。


『好きな人、気になる人、いませんか?』


 それに対して俺は『いる、気になる人』と言った。

 でも、その気になる人よりも、俺は小さい頃に1度だけ出会ったあの子が、初恋の女の子が忘れられない。

「元気かな・・・」



 数日間、雨の日が続いたある日。

 久しぶりの晴れに浮かれて外に出た。

 小学生だった俺は真っ直ぐ公園に向かって走った。

 公園に辿り着くと、ブランコに乗って遊ぶ女の子が1人いた。

 白いワンピースに、似合わない黒のキャップ。

 伸ばした髪はブランコをこぐ度にふんわりと靡いていた。

 俺はその子に声をかけた。

「君はどこから来たの?」

 女の子はびっくりして大きく目を開けて俺を見た。

「・・・遠く、から」

 どのくらい遠いのかは分からないが、子供ながらに納得する。

「ねえ、一緒に遊ぼ!」

 誰とも約束していなかったから、この子と一緒にと思った。

 すると女の子は頷いた。

 ブランコで立ちこぎ、女の子は座ったまま、遠くに飛ぶ競争をした。

 その後は砂場で訳も分からず穴を掘ったり、城を作ってみたり。

 滑り台で何度も滑り、シーソーで遊び。

 一通り公園にある遊具を制覇した。

 最後は疲れたので山のような形の上でゆっくりする事にした。

 この山のような形は、傾斜の所にはいくつか石がめり込まれていて、それを階段のように使って登る。

 上は平らになっている。

この山のような形には穴があって、声を出すとよく響く。

「一緒に遊んでくれてありがとう」

「うん、楽しかった」

 遊んでいる内に打ち解けたようだ。

「あっ」

 女の子の服にはほんのり砂がついていて、くすんでしまっていた。

「服、汚れたね」

「大丈夫、洗えば落ちるよ」

 女の子は心配かけまいと笑顔で言った。

「明日もここにいる?」

 すると女の子はシュンとして、首を横に振った。

「帰るの」

「そうなんだ・・・」

 俺もシュンとなる。

 せっかく会えたのに。

「またいつか、ここで会おう」

 シュンとなった君はどこへやら。

「うん、約束!」

 2人で指切りげんまんをした。

「ところで、名前は?」

「私の名前はー・・・」



「はぁ・・・」

 俺は溜め息を吐いて、ベッドに寝転がる。

 すると、直ぐにうとうとし始めて、夢の中へ入ってしまった。


 あの女の子とまた会えるかな・・・


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る