第3話 元気な子
「あ!先輩!」
売店でパンと牛乳を買い終えた所で、
「またパンと牛乳?午後の授業持ちます?」
「体育がないから平気さ」
「なるほど!」
午後に体育がある場合は、食堂に行ってちゃんと食べるし。
「あの、一緒にお昼なんてどうですか?」
「良いよ」
「よっしゃ♪」
なんだかグイグイ来るなー。
中庭にあるベンチに2人で並んで座った。
「じゃじゃーん!」
「おっ、弁当か」
「高校生になったんで、早起きして作ってるんです!」
「偉いな」
「お母さんに半分手伝って貰ってまして」
「正直」
「修行します」
今まで親任せなら、始めたのはつい最近と思えばこれから上達するだろう。
「これからだよ」
「ですね!」
「前向き」
「私の取り柄!」
明るくなきゃ水上ではないよな。
「先輩、帰りは一緒にどうですか?」
「良いですよ?」
「わぁーい♪」
喜んで貰えて良かった。
「送ってくから」
「ありがとうございます!」
愛嬌あるなぁ。
※
下校途中、真っ直ぐ帰るのはつまらない、と水上が言ったので、コンビニで飲み物とお菓子を買って、今は公園にいる。
ベンチに並んで座ってゆっくりする。
小さい子供連れの親子は全くいない。
おやつの時間までには帰ってしまうのだろう。
小中学生は学校が終われば、部活か家で宿題で忙しかったりゲームに夢中なのかも。
スポーツドリンクを一口飲む。
少し眠かった頭が冷たい飲料水によって冴える。
「先輩、お疲れですね?」
「まあそれなりに」
「生徒会の役員でしたっけ?」
「うん」
「だからかー」
お疲れの原因に納得する水上。
その後、水上はコーラをぐぐっと飲む。
「飲みっぷり良いな」
「一気だと苦しいけど、勢い良くそれなりに飲むと気持ち良いんで」
確かに。
「夏なら最高だろうな」
「そうなんです!スカッとします!」
想像するだけで気分が良い。
「あの、質問なんですが」
もじもじと水上は遠慮がちに。
「何だ?」
なるべく優しく言った。
「先輩は、そのー・・・」
何でもズバッと言う水上にしては珍しい。
「どうした?大丈夫か?」
「大丈夫なんですがねぇ」
水上はペロッと舌を出して頭をかく。
その後、深呼吸をしてからこう言った。
「好きな人、気になる人、いませんか?」
おぉ・・・脈絡なく、ある意味ズバッと。
少し驚いたが、正直に言おう。
「いる、気になる人」
すると水上は一瞬だけシュンと暗くなったが、すぐに明るくなる。
「そうですか、ですよね!」
空元気に見えるが、触れないでおこう。
「でもな、付き合いたい、て気持ちはないんだ」
そう、気になる人がいても付き合いたいまではない、不思議な感覚。
“好き”なら付き合いたいと思うのだろうか。
「先輩、やっぱ変わってる」
「あはは」
だよなー。
ベンチから立ち上がった水上は鞄を肩にかけて、くるりと俺に向き合う。
「でも、そんな先輩が私は好きだなー」
えっー・・・
いたずらっ子のような顔をして。
「やっぱ1人で帰りまーす!」
そう言って水上はダッシュで公園を後にした。
残された俺はスポーツドリンクを一気に飲んだ。
「ふぅ・・・」
熱が引くのが分かった。
「忘れよう」
考えない事にした。
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