第2話 ありふれた教室
朝の教室、誰もいなかった。
どうやら1番乗りのようだ。
そう思っていると。
「おはよう」
「なんだいたんだ」
1番に来ていたのは
「ふふ、自分が1番って思ったんでしょ?」
「バレた?」
「バレバレ」
2人で笑った。
「今日はなんで?」
「日直」
「なるほど」
それにしても早い。
「何時にここに?」
「6時半」
俺は目を大きくして驚いた。
「いろいろあるの」
それでも早過ぎ。
※
6時間目の授業が終わり、教材を職員室に持っていく冴木を見ていて、量が多いような気がした。
だから俺は。
「手伝う」
「いいの?ありがとう」
重たいカゴを持つ。
「おぅもっ」
「みんなのノートとプリントとかね」
冴木はカゴに入り切らなかったノートと本2冊を持つ。
「やっぱ選手交代」
「だーめ」
「ですよねー」
ドアの近くにいたクラスメイトに開けて貰って、俺と冴木は職員室に向かった。
「「失礼しました」」
先生にノート等の物を届け終えて職員室を出た。
「プリント託されたな」
「ついでに持ってけって、ね」
俺と冴木の担任はちゃっかりしている。
職員室に自分のクラスの生徒が現れると、必ず言伝かプリントを託す。
楽したがりなのかもしれない。
「まあ、でも憎めないから尚更な」
「うんうん」
大袈裟に頷く冴木。
「さっ、早く戻って配っちゃお!」
早歩きで教室に向かう冴木の後を追った。
※
生徒会室から教室に戻る。
放課後の教室は割りと好きな方だ。
机の上に鞄がちらほらあっても、誰かがいても、全員集合していないのが良い。
日中の余韻が漂っていて、1日が終わる実感が湧いてくる。
帰ろうと机の脇にあった鞄を手に取って肩にかけた。
椅子が少し後ろに出ていたので、机にきちんと戻した。
これで帰れる、そう思っていると。
「まだいたんだ」
「冴木」
「忙しいんだね生徒会」
「まあな」
冴木の手にある黒板消しが綺麗になっている。
「教室の物を綺麗にしちゃって」
「明日気持ち良く使いたいかと思って」
「それな」
相変わらずの綺麗好き。
黒板消しを元の場所に置いた後に冴木は言った。
「ねえ、一緒に帰らない?」
「良いよ」
「やった」
嬉しそうな顔をした冴木。
可愛いやつだな。
鞄を肩にかけた所で「帰ろ」と再度冴木は言った。
何気ないありふれた教室での出来事。
面白みはないが、俺にとっての当たり前で、当たり前過ぎて、なくなってしまう衝撃は計り知れない。
そう思う今日この頃。
冴木を家まで送り、俺は真っ直ぐアパートに帰った。
部屋に入る前に大家さんと会って、また野菜を頂いてしまった。
毎度すみません。美味しく頂きます。
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