第1話 春の風に乗って

「また同じクラスだね」

 去年から同じクラスの冴木さえきさくら

 肩くらいまでの長さの髪。

 少したれ目であるから、それが優しく見えてしまう。

「またよろしくな」

「こちらこそ」

 桜はスカートの両端をつまんで少し屈んでお辞儀した。

「どこのお嬢さん?」

「田舎でちょっと小金持ち」

「設定ウケる」

「ふふ」

 他愛ない会話でも、面白くなるもんだ。



「せんぱーい!」

「んおっ?」

 売店に向かって廊下を歩いていたら顔見知りに会った。

 中学から知っている1つ下の水上みなかみ陽葵ひなた

 身長は俺の肩くらいで、目鼻立ちがはっきりしている整った顔。

 人懐っこくて底なしの明るさで、周りにはいつも友達のいるリア充。

「先輩の事、追っかけて来ました!」

「それは光栄だ」

「えへへ♪」

 頭をかく陽葵。

「照れるとこじゃない」

「ですよねー!」

 いつもニコニコしてんなぁ。

「では、高校でもお世話になります!」

「おう」

 人懐っこいから、ついつい関わってしまう。



 放課後になると俺は生徒会室に寄った。

「失礼しまーす」

「お疲れさん」

 1つ上の先輩で美人生徒会長の異名を持つ、門倉かどくらかえで

「新学期はどうだ?」

「変わりないです」

 去年の生徒会選挙で、俺は何故か書記に立候補させられみんなに担ぎ上げられた結果、当選してしまった。

 顔合わせの為に初めて生徒会室に行った時、先に来ていた門倉先輩。

 窓の外を眺めていた時の綺麗な横顔、開いていた窓からはふんわりと風が入りロングヘアの髪はさらさらとなびく。

 ちょうど夕方の時間帯だったから、西陽が射して先輩の美しさが際立った。

 息を飲む美しさを初めて見た瞬間だった。

「あと数ヶ月、よろしくな」

「はい」

「必ず我の力で、君を生徒会長に押し上げてやるからな!」

 美人なのに口調は同年代にしては変わっているのは目をつむる。

 生徒会長の件、断ってきたのに規定路線なんだな。

 仕方がない、腹を括るしかないようだ。


 今年は魅力的な女の子達に囲まれてしまったようだ。

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