第7話 電子線

 旅行の二日目は特に決まっていない。各々行きたいところに行く。そういう風にすることを事前に決めていた。俺は昨日倒れたということもあり、旅館で安静にしておこうと思う。芽衣も看病につくと言っていたが、せっかく京都に来たのにもったいないということで樹に連れ出してもらった。


 「湊さん今いいですか?」


 「長谷川さんどうしてここに。観光行ったんじゃ.. 」


 「行くふりをして密かに戻ってきました。」


 「何のためにそんなことを。」


 彼女は真剣な顔で話し始める。


 「単刀直入に聞きます。渡辺由紀を覚えていますか?」


 「覚えていたわけでないが、樹から聞いた話で俺と同じく事故にあった被害者だっけか。」


 「そうです。しかし、正確に被害にあったのは彼女だけです。」


 「一体どういうことだ。」


 彼女は困惑している俺を差し置いて間髪入れずに話す。


 「まずは私の話から。私は警察の人間で、警察内の調査で渡辺由紀が殺された事件の犯人がこのシェアハウスの中にいる可能性が高い。ということで潜入調査をすることになり、私が派遣されることになった。」


 「なぜ、そんな話を俺に。」


 「あなたに事件解決を手伝ってほしいの。」


 「彼女の両親から聞いたの。彼女はあなたの恋人だったらしいわ。あなたは忘れているようだけど。」


 事故の前の恋人は芽衣のはずだが。


 「ほんとのなのかそれ、信じがたいんだが。」


 「信じてほしい。私はこの事件を未解決で終わらせたくないの。」


 「私は彼女の親友なの。絶対に許さない。必ず犯人をつかまえるの。お願い協力して。」


 「わかった。協力する。」


 「ありがとう。私は行くね。」


 「え?どこに?」


 「せっかく京都に来たんだし観光するわ。じゃ、またね。」


 そう言うと彼女は部屋を出ていった。彼女の言っていたことが事実なら芽衣は何故嘘を吐いたのか。この中に犯人がいるのだ。全員に気をつけなきゃいけない。

 俺も密かに調べていこう。何か大切なことを忘れている気がする。



◇◇◇



 「こちら長谷川。被害者の楠湊と接触し協力要請をしました。」


 「木村志帆に付けた発信機の位置情報を教えてください。」


 「これから尾行を開始します。」



◇◇◇



 「証拠になるようなもの全部消したの?トーク履歴や通話履歴。」


 「消してない。消さなくてもバレないだろ。やったのは俺たちじゃない。そもそも湊の記憶もないんだ。大丈夫だろ。」


 「そうは言っても何があるか分からないじゃない。消しときなさいよ。」


 「まぁそうだな。」


 「あんまそうカリカリすんなよ。俺たちは悪くないって。」


 「でも、あんなことが起きたのは私たちが..」


 「違う!!」


 「せっかくの旅行だそんなこと考えずに忘れよう。」


 「そうね。ごめんなさい。」


 「でも湊にはいつか謝らないとな。」


 各々が違う時間を過ごした。三日目、帰宅となり京都旅行は幕を下ろした。


  


 






 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


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