第6話 スペクトル
京都行きの新幹線に乗り込む。二時間くらいの道のりだ。電車等の移動中にただ頭を空っぽにして、目的地につくまで建物が右から左へと流れるのを車窓から眺めて過ごす時間がとても好きだ。だが、みんなと旅行となるとそうもはいかない。早速お菓子交換会が始まっている。トランプでもやって過ごしてあっという間に京都についた。
せっかくの旅行だというのに、色がついていないので景色を楽しめない。旅館のチェックインを先に済ませる。これから伏見稲荷大社に向かう。修学旅行シーズンともあって高校生が多い。観光客もちらほらと見える。やや葉も紅く染まり始めている。伏見稲荷大社の千本鳥居は圧巻するものであった。隙間から通る心地よい風は季節の変わり目を感じさせてくれる。ふいに頭が痛くなる。意識が飛びそうだ
「すまない。肩を貸してくれ。」
「いいですよ。大丈夫ですか?」
ちょうど隣にいた。快く芽衣が了承してくれた。急に目の前が真っ暗になる。芽衣の声が徐々に小さくなり、意識が遠のく。
「ねえねえ、みてみて!鳥居いっぱい。綺麗だね。」
「ね、一緒に写真撮ろ。」
子供のようにはしゃぐこの人は誰だろう?入院初日にみた女性だろうか。
「早く撮ってよ、湊」
鳥居をバックに並んで携帯で写真を撮った。
「ほんと、写真のときの笑顔下手ね。冗談。かっこいいわよ。」
俺をからかって笑う。
「どうしたの?鳩が豆鉄砲を食ったような顔して。二人できた旅行なんだからもっと楽しみなさいよ。」
さっきまでみんなと旅行に来てたはずなのだが。いったい何の話なんだ。
「うん。」
「あっちのほうも見に行こ!」
彼女が手を握って引っ張る。これが過去の記憶なのか夢なのか分からない。
また意識が遠のく..
目覚めると旅館の布団に寝かされていた。
「おい、大丈夫か。」
悠斗が心配そうに話しかけた。
「運んでくれたのか。ありがとう。」
「お前、急に倒れるからみんな心配したんだぞ。」
「すまなかった。」
「みんなはちょうどご飯食べにに向かったぞ。おれもちょうど向かうとこだった。」
「そうか。ご飯いくか。」
みんながいる食事場に向かう。
「おい、湊おきたんか。大丈夫か。」
樹が声をかけてきた。まだほとんど懐石料理に手を付けていないのが分かるが。かなりできあがっているようだ。またみんなに迷惑かけてしまったな。
「あんたあんまり心配かけさせんじゃないよ。」
木村がちょっかいをかけてくる。
「本当に。心配したんだから。」
芽衣が飛びついてくる。
「心配かけたな。」
自分の席に着く。目の前にある懐石料理はどれもおいしそうだ。
そして、旅行の二日目に続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます