第4話 光彩

 「湊の退院を祝してーー」


 「乾杯ーー!」


 樹が乾杯の音頭をとると全員が好きな酒やジュースをグラスにいれて乾杯をおこなった。大きなテーブルではたこ焼きを焼いている。樹は相当集中して焼いているようだった。一段落つくとL字のソファに座り雑談を始める。俺の症状を詳しく伝えた後、自己紹介を始めることにした。俺からみて左から時計周りに樹、芽衣、悠斗と自己紹介をした。悠斗の苗字は山室だと知った。次は面識のない人だ。

 

 「私、木村志帆きむらしほ。楠君とは大学が同じだったわ。よろしく。」


 彼女はキリっとした顔つきで髪は短くショートカットで前髪を左右でかき分けている。彼女はグラスでなくジョッキで飲んでいる。酒が強いのだろうか。


 「次は私、長谷川美桜はせがわみおよ。みんなとはこのシェアハウスの募集をみてここに住むことに決めてから初めて会ったの。つまり、初めましてってこと。よろしくね。」


 彼女だけ唯一誰とも知り合いではないらしい。髪は後ろで結んでいて、クラスでは学級委員にいそうな真面目な感じにみえる。


 「じゃあ自己紹介も終わったし引き続き飲むぞー。」


 二日酔いで次の日後悔しなければ良いがな。


 時間がたち、一人また一人と眠りに落ちていく。そういう俺も眠くなってきた。少し眠ってしまおうかな。




◇◇◇




 どれくらい眠ってしまったのだろうか。頭が痛い。樹を馬鹿にしていた割に俺も飲み過ぎていたようだ。周りの人も寝ているようだ。隣で誰かの話声が聞こえる。いないメンツから考えて、木村と山室だろうか。


 「ほんとに記憶がないんだろうね?」


 「た。、たぶん。彼女について聞いてみたがあっけらかんとしてたぞ。」


 「よかったわ。このままいけば何も心配することはないわね。」


 何か心配することがあるのか。俺に関して話をしてないことがあるんだろうか..

俺の彼女が過去になにかあったのは間違いない。恐らく関係しているのは確定だろう。





◇◇◇




 「おい、起きろよ。」


 朝の陽ざしと樹の軽い平手打ちで起こされた。目覚めると樹と芽衣が起きていた。ほとんどの人が仕事にいっているらしい。芽衣が作ってくれた朝食を三人で食べることにした。

 今日は樹が昼から仕事らしい。俺は特にすることも無いので何をしようか考えていると。芽衣が買い物にいくというので、付き合うことになった。


 最近できたといわれる大型ショッピングモールにきた。そろそろ寒くなってきたのお冬用の服を買いたいらしい。芽衣に好みを聞かれたが女の服は正直分からない。夕飯の食材を買い家に帰る流れになった。帰る途中沈黙が耐えられず、俺が口を開く。


 「みんなで旅行なんていけたらいいよね。温泉なんていいんじゃない?」


 「私は湊と二人で行きたいけど..」


ん?どういう意味だ?


 「私は湊の彼女なんです。記憶も失って大変なときだって分かってる。でも他の人に湊を取られたくないの。」


 彼女の瞳には涙が浮かんでいた。


 「私、自分勝手だよね。分かってる。でも本当に嫌なの!」


 「きっと昔より幸せになれる。お願い。」


 真剣な彼女の訴えから付き合うことにした。もし断れば記憶が戻ったとき後悔するだろうからな。彼女をもう少し知りたいと思った。


 今夜もパーティーになりそうだな。やれやれ飲み過ぎに注意しよう。

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