第四話

「おーい、遅いぞ。お二人さん、楽しんでいたんのかな?」


 リュド、もうかなりできあがっていた。

(このバカ、セクハラで訴えてやろうかしら)


「リュド、さすがに言葉を選んで話せよ。恋人の語らいの時間とか」


 エンリ、も、できあがっていた。

(このアホ、セクハラで訴えてやろうかしら)


「ふたり、あそんで、たのしんで、いたの? ディナも」

(ぎゃー、教育によくない、よくない。言葉の覚えて楽しいからって使い始めている、意味を理解していないから、たちが悪いのなんの)


 バチン、バチン。と鋭いツッコミではなく、デコピンが二人の額に赤い印を。


「酒を飲んでも飲まれるな。キアラをおちょくるならいいが、子どもディナが居るんだから少しは自重しろ」

(おーい! ディナのことでいいこと言ってるけど。わたしのこと軽視し過ぎだろウツケ、セクシャルハラスメントで訴えてやろうかしら)


「あのねぇー。好き勝手言ってると、三人ともセクハラで訴えて! ガッポリ慰謝料請求するわ――――」

「で、だ。原稿は書き終えたのか? 先生」


 いらないことを口にして、ひどい目にあっているというのに、この男は懲りんな。水の入ったコップを額に当てている、そうとう痛かったんだろうなリュド、ジャガーのデコピン。あと、エンリも同じことしてる。

 ざまぁー、みろーぉー。


「リュド。俺の顔を観れば、わかるだろ。先生の筆の進み具合」

「「あー」」「ぁー」

「なに! 納得しているのよ、リュド、エンリ。それに、ディナも」



 わたしは、かなり真剣に悩んだ。一〇〇ルド、ケチってA定食を選ぶべきか。それとも、B定食のミニハンバーグ付きを選ぶか、を。

 だ!

 今日に限って、B定食にミニハンバーグが付いているからだ。大盛りで有名な美味亭では、ミニハンバーグでもけっこう大きいので食べごたえが。ここで節約するために我慢し、A定食を食べる、か! それとも、思い切ってB定食を選ぶか!

 名誉として、わたしは意地汚いのではない。やりくり上手と呼んでもらいたい。

 ここは、やはり!


「すみません! アナさん。スペシャル定食、二つお願いします」

(いいなぁー。わたしも、スペシャル定食、食べたい)


 ジャガーは一見捻くれた性格しているようで、実際はとても面倒みがいい。

 なにせ、わたしの書いている冒険小説の推敲を無償でしてくれたり、執筆で悩んでるいるとアドバイスしてくれる頼れる担当編集なのだ――鬼だが。

 最年少のディナには、魔法を指南してあげたり。いまもだけど、食事などの身の回り関しても援助してくれている。それに、エンリには剣の稽古相手になってくれたり。リュドには、ブービートラップの仕掛け方から解除方法などの高度な専門知識を教えたりと。自分の知識や経験などを惜しみなく提供してくれてるし。

 あと、今、居ないんだけど二人のメンバーとも、すぐに仲良くなったのよ。わたしたちのなかでも、癖の強い性格の持ち主なのに。

 年の功ってやつなのかしら。

 よ――兄貴肌!

 だだし、

 時と場合によっては厳しい。わたしたちが、巨大スライムと戦っているときも、ギリギリまで加勢してくれなかったし。

 冒険者を生業にしているんだから、当たり前のことなんだけどね。


「キアラは?」

「へぇ?! じゃー、A定食で…………」

(いつでも、スペシャル定食を食べれるぐらいには。売れたいな~ぁ~)

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