第二話

 ため息まじりで皮肉る声音。が、わたしの鼓膜から脳に伝達されている間に、巨大スライムは――――。



「きゅぁら、きゅぁら。おなか、ぺこ、ぺこ、な!」

「まって、まってね! いま、筆が」

「きゅぁら、きゅぁら。おなか、ぺこ、ぺこ、な!」


 わたしは、快調に走らせていた筆を止め。小さな頭に、ふわ、ふわ、と風に吹かれたら飛んでいくシルバーグレーの癖っ毛に手のひらで押さえながら。


「ディナちゃーん。わたし、いま、物書きの神さまが降臨されているの。そしてね、物書きの神さまは、とても、とっても気まぐれで、ね。降臨してくれないときは、永遠に降臨してくれない――神さまなの、わかるかなぁー」

「ぅん。ジャマして、ごめん、な。きゅぁら」

「子どもに、謝らす必要がないときに謝らすな。三流、物書き」

「ぅ」

「でだ。三流、物書き先生として。どんな言葉が、ふさわしいと物書きの神さまは言っているのかな」


 自分の頭をぽか、ぽか、と叩いた――反省、わたし。


「ごめんね。ディナ」


 最年少エルフ少女、ディナの綿毛のような髪を、わし、わし、と力いっぱい! ごめんなさいって気持ちを込めて両手で撫でまわした。

 うん、うん。いい娘だ。わたし、もう少し大人にならないとダメだな。


「さきに、いってる、な」


 と、笑顔で部屋を出ていた。


「素直に謝る、お前は、大人だよ。二流物書き、さん」

「ふんだ」


 わたしとディナとの会話の間に入ってきている人物。が、先程まで書いていた巨大スライムを倒した人物でもあります。

 名前は、"ジャガー・T・ポカ"、といいます。ミドルネームのイニシャルである、 ティィーの中間名は教えてくれません。

 わたしたちと出会う前にいったい、ナニか? とんでもないことをやらかして犯罪履歴があるか? それとも、どこぞの犯罪組織から生死を問わずデッド・オア・アライヴの手配書が出回っているとか?

 というのは冗談です。

 犯罪履歴があったり、犯罪組織と繋がりあると判断された場合は、冒険者カードを発行してくれません。最低限の身辺調査されますから。あと、筆記試験と実技試験もあります。

 もし、発行した冒険者組合ギルド支店から犯罪者が出たりすると、その支店に対しての査定評価に大きく影響します。最悪、支店長さんが辺境支店に左遷させられます。


「おい、聞こえているのか? キアラ」

「はい、はい。聞こえてますよ」


 ごめんなさい。おいおい、ジャガーとの出会いや、他のメンバーたちのお話をしていきたいと思います。


「飯、食いに行くぞ。脳みそにエネルギーが足りてない状態で書かれて、誤字脱字のオンパレードで推敲すいこうする側からすると困るからな」

「わ、わかってるわよ! 美味亭びみていに行くんでしょ」

「美味亭、以外に。お前たちの持ち金で腹を膨らませてくれる、飯屋があるのかい? 金庫番リーダー

「…………なぃ…………」

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