第一章

第一話

 わたしたちの目の前をふさいだ。

(ただしくは、ふさがれてた。が正解です)

 タテは人肩車、三階建。

(言っている意味がわからない? わたしも言ってて意味がわかない)

 ヨコは成人男性が両手を真横に、めいっぱい開いて、五人並んでいるぐらいの幅。

(え! 何かのスポーツディフェンスフォーメーションだろって。いや、そんな楽しんでいるような、状況じゃないんですよ。これが……)

 すぐ目の前に、ブヨ、ブヨ、したプリンよりも、ちょっとだけ弾力があり。でも、ゼリーよりも、ちょっとだけと打弾力が弱い。アイツのでっかいサイズのが居るのよ。

(アイツ無害なら絶対リラクゼーションアイテムとして販売したら即日完売するわね。え?! さっぱりこってり、意味不明)

 あいつ、アイツよ! 半透明で取り込んだ内容物を包み隠すことを恥とも思わない、ブヨ、ブヨ、している。超有名なモンスター、スライム! の大きいのが居るの!

(ちょー、やっかい)

 あいつ小型でも、ペッて自分の体液の一部を飛ばしてきてね、その液体に触れると皮膚がただれるのよ。小型は濃度が低いのか、すぐに、水をかけて応急処置すると軽度の火傷程度ですむんだけどね。

(本当は水よりも薬草液ポーションをかけると、なお、良いです。水よりも殺菌効果が高く、傷口から体内に侵入したばい菌の増殖を抑えてくれて、二次感染の予防になるので。あと、お金があるならできるだけケチらないで、お高いポーションを買うことも推奨しておきます。効果が段違いですんで)


 それどころじゃない!


 現在進行形で"エンリ"が、剣で斬って斬って斬って斬って頑張って戦ってくれている。

(涙目になりながら。そうだよね、新しく買ったばかりの剣が、ちびっと、ちびっと、ずつ刃が欠けてきてるんだよね。うん、うん、わかるよ。節約して買ったばかりだもんね)


 そして、かく言う私こと、"キアラ・フェランド"は。

 巨大スライムの伸びてくる、ウニョ、ウニョ、触覚からエルフの女の子、"ディナ"をおんぶしながら逃げまわって、巨大スライムにどう対抗するか考えている真っ最中なのです。

(思い出した、スライムは炎の魔法に弱いんだった! なぜ、弱いかという詳しい説明はあとで)


「ディナ、ディナ! ほのお、炎に弱から炎の魔法をつかって、使って」

「うにゅ」


 わたしの背中で、もぞ、もぞ、と動いているのでリュックサックに引っ掛けてある杖を取ろうとしているのだろう。


「うんしょ、な」

「イタ!」

「ごめん、な」

「たいじょうぶ、大丈夫。はやく、早く、まほう、ほのおの魔法を」


 杖って魔法使うための道具だけど。これで頭部を力いっぱい殴ったら、死んじゃうな人。と想像できてしまった。杖の先の丸い部分が、わたしの頭に当たって、すごい、凄い、頭痛がするんですけど。これ、たんこぶ、に、なるな。


「フぃアーぁー!」


 ディナは杖をスライムに向けて、炎の呪文である"ファイヤー"を唱えた。ディナはエルフだけど、まだ、子どもだから、ちゃんと発音ができないんだよね。でも、そこが可愛らしいんだ、一生懸命、頑張ってますってところが。

 しかし、

 魔法って不思議。

 火って意味であるファイヤーを唱えたのに、恐怖って意味のフィアーって言っているのに。ちゃんと炎の球が飛んでいったんだ。

 魔法の呪文って、案外適当でも発動するんだね。もしかして、魔法って呪文を唱えるだけで発動しているんじゃなくて。別のナニか? が作用して、それが魔法を発動させているのかも。

 そう、そう。飛んでいった、ディナの炎の球はスライム触手で簡単に消されちゃった。

(っていうか、このままじゃー。巨大スライムのご飯にされちゃうよぉー!)


「はぁー。燃えろコンブスティオン

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