第2話

「…ここ、探索して。私、許可する」

 いきなりなんの脈略もなしになんか命令された。なんでいきなり命令してきた理由は分からない、聞いても答えてくれるか怪しい。

「…君は僕にここを探索してほしいの?」

「うん、そうじゃ、言わない」

 …この子のことを聞くとなんだか普通の子ではないように思えた。出雲という女の子は一体何者なのか、脳内にある複数の疑問を解消できるのかもしれない。だからここ…古びた神社の探索するのは価値がありそう。出雲の命令に従うという理由ではなく価値がありそうだから散策する。

「探索する、私、嬉しい」

 独特な口調を持ち、家が古びた神社で、両親が元からいないという少女。…なんだか不気味で謎がありそう。不気味という点もあってか彼女の隣にいることが少し怖くなった。…それも探索する理由の一つにもなるよね。

「私、ここ、いる。分からない、あったら、聞いて。答える」

「…わかったよ」

・・・

 まずはこの神社のことについて調べる。場所にはそれぞれ名前が与えられている。

神社となれば確実に名前が与えられているはず。神社の名前は…ほとんど石碑か鳥居に書かれているイメージがある。目の前に鳥居があるからそこに神社の名前がないか確認してみよう。

「…少し遠くて見えづらいが…錠前神社…かな? なんだか変な名前の神社だなぁ」

 錠前なんて見かけていないけど…。「錠前神社」なんて名前の割に錠前がない。どこか別の場所にあるのか? 例えば御神木とか。御神木周辺になにかあるかもしれない。と言ってもこの神社に御神木があるかどうかわからないけど。出雲に御神木がないか聞いてみるとしようかな。

「鋏くん、聞きたい、なにか?」

「錠前神社って御神木とかあるのか?あったらどこにあるか教えてほしい」

「御神木、ない。けど、聖域、裏手」

 御神木はないけど聖域というのがこの神社にあるということかな? そして裏手…これは神社の裏手にあるという意味で合っているのかな。

「裏手というのは神社の裏でいいんだよね?」

「うん」

 本人がそういうなら間違いないね。次は神社の裏にいくとしよう。…そういえばこの神社、絵馬がない。普通の神社なら絵馬は当たり前のようにあるのにこの神社にはそれがない。聖域と関係があるのかな? いや、ただの根拠もない仮説だけど。

・・・

神社の裏手には階段があった。聖域に繋がる道だとは思った…けど。

「…なんだ、これ」

 かなりの異質な風景にこの場所を聖域と呼んでいい場所だとは思えない。聖域の正体は滝と植物の蔦だった。滝はそこまで激しくはなく小さな滝が静かな音を立てて川に落ちている。土地の形状はまるで階段のようで真ん中に滝があり、両サイドの土地が階段のようになっている。滝だけだったらまだ聖域と呼んでいいと思える場所になる。

 問題は植物のツタの方、まるで絵馬やおみくじを結ぶ紐のように伸びている。しかし結んでいる代物が普通ではなかった。結ばれていた…いやかけられていたのは錠前だった。しかもほとんど鍵がない、鍵をかけたら一生解除できない代物。それが植物のツタに何千個もかけられていた。蔦が切れそうなのに切れない、そこまで丈夫なんだね。

 いや、そこはどうでもいい…問題はなんで蔦に錠前がかけられている理由。聖域だから石碑とかないのかな、こういう場所には絶対にある。案の定、あった…この場所についての石碑が。

「なになに…錠前神社の聖域は縁結びの神が降臨する場所と言い伝えられています。縁結びの神に絵馬などの植物の蔦にかけられる代物に自分の名前と結ばれたい相手を記入することで慈悲深い神が二人を結ばれる運命にしてくれます。錠前をかけさせれば永遠に結ばれると言われていますので参拝をする際には神社内の売店に錠前を売っていますのでそちらからお買い求めて下さい…」

 ここは縁結びの神を祀る神社であることがわかった。縁結び…よくある神社だけどこういう変な伝承があるのは珍しいなぁ。だからこんなにも錠前が蔦にかけられているんだなぁ。…少しだけ見てもいいよね?階段があるから錠前の近くには来れる。内容を少しだけ見ておこう

・・・

 …知らない名前がばーっと並んでいた。そもそも内容を知ってて何が変わるんだろうと疑問を抱いていた。なんにもならないのではないんじゃ…と思い始めた。聖域の効果はあるのかないのかは分からない。実際に錠前をかけた人しか分からない。

・・・

「結局何も分からなかったような気がする…仕方がない…また出雲のところへ戻ろう」

何も分からなかったと思う。散策してと言った出雲はどうしてあんなことを言ったのかな? なにか理由があって…散策してって頼んだのかな。僕は何もわからないまま出雲のところへ戻った。

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