報い
※ 残酷描写注意です。
初めて人を殺したのは17の時だった。兄を襲った輩をやった。手応えはあっけなかった。そいつは胴体にナイフの柄を突き出したまま崩れ落ち、俺らの家の床を濡らした。その後ろから恰幅のいい男が体を揺らしてやってきた。その男は俺に「仲間にならないか」と誘ってきたから、俺は「嫌だ」と拒絶した。初めての殺人で胸はどきどきしていたが、悪い気分じゃなかった。でも、こいつの配下になるのは違うと思った。
「お前に選択肢はない」
そう言って手を伸ばしてきたから、俺はそいつにもナイフを突き刺した。
それから俺は森に住むようになった。その森は薄暗く気味の悪いところだったが、人はそこを通らざるを得ない交通網になっていた。
俺は気まぐれに人を殺した。気持ちよかった。目の前で人が血だらけになって死んでいくのをみるのはいい気分だった。大抵の人間は、道に迷ったふりをする俺に好意的だ。道を説明してくれる彼らに近づいて、後ろ手に持っていたナイフでさっくりといく。大抵の人間は唖然とした表情をして、そのまま死んでいく。
過程に興味はなかった。焦らすようなやり方は好きじゃない。「なんで?」という表情が見たくてやっているようなところがあった。そうだろう。不思議だろう? なんでお前が殺されなきゃならなかったんだろうな。残酷だよな。理不尽だよな。でもそういうものさ、この世ってのは。
男がやってきた。俺はそいつを組み敷いた。
「恨むならお天道様を恨みな」
「いいや」
男は拳銃を俺に突きつけた。
「お前が犯した罪は、お前が報いを受けなきゃいけない。……我が弟よ」
破裂音。薄れゆく意識の中で、俺は確かに兄の涙を見たような気がした。
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