水晶

 星がちらちらと光っている。水槽の中には夜がふわりと詰まっている。僕はその上に水晶を浮かべた。水晶はくるくると回りながら、次第に沈潜していった。

 水槽の中の小人は、せっせと働いている。水晶を取り合うのだ。いつもお勤めご苦労さまです。

 僕はマホガニーの机に戻り、返信を書くのを再開する。

「まみちゃんへ。こちらは元気です。心配しないでくださいね。小人たちも元気ですよ。相変わらず水晶が大好きみたいです。協力して分け合うフェーズにはまだ至っていなくてね。そのうちそうなっていくとは思うよ。安心してね。野生に戻す方法を優しい君は考えているみたいだけれど、彼らの住処である森が縮小している今、やはり帰すのは得策でないように思われます。僕の仕事は森の再生の研究であることはまみちゃんもよく知ってると思うけど、反対勢力に遭ってなかなか進まないのが現状でね。早く小人や、動物たちが幸せに暮らせる世の中が来るといいなぁ、と祈りつつ毎日仕事をしています。まみちゃんも勉強頑張ってるみたいだね。励みになります。お互い世界をよりよくするために頑張ろう。じゃ、元気でね。」

 僕は立ち上がり、また水晶を落としに行った。水晶には興奮剤が塗ってある。小人たちが協力し合うことはない。

 まみちゃん。また遊びに来てね。小人を見て心配そうにしている君が好きなんだ。間違っても水晶を舐めちゃだめだよ。うふふ。君が口に入れたくなるようなカットを施そう。楽しみだなぁ。

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