第94話 強敵

「な、何だ!?」

「こ、このパターンは知らないけど、なんかやばそう!」


 とりあえずメモ帳を拾い、逃げようとするが、回り込まれた。

 分裂しているが、元がビルのように巨大なので、一体一体が普通の家くらいの大きさがある。


 俺は剣を抜いて、斬りかかるが、通じずに剣が弾かれてしまった。


 その後、赤い立方体が、レーザー光線のような、赤いビームを放ってくる。


 回避する。光線が当たったところが、炎上した。炎属性の攻撃のようである。


 全ての立方体が、光線を打ち始めた。クラリカらが何とか対炎属性の防御魔法を使用し、敵の攻撃を防ぐ。


 無制限に連発できるというわけではないようで、敵の攻撃が止む。反撃のチャンスだ。


 剣は効かなかった。ならスキルで攻撃しようと思い、ダークブラストを放った。今度はダメージが入り、立方体は粉々に砕け散った。


「どうやら、魔法は効くみたいだね……しかし、この状況……まずいね。私も防御魔法を何回でも打てるわけじゃないし。逃げるには数が多すぎる」


 俺はダークブラストを放ち、もう一体を攻撃して破壊した。連発して、近くにいる立方体を壊し続ける。


「クラリカは、防御に専念してくれ。攻撃は俺がやる」

「そうするのがいいね。お願い」


 敵の攻撃が来そうな気配を感じたら、クラリカの防御魔法で攻撃を防ぎ、やんだら、魔法を解いて、俺が攻撃して破壊していく。


 このパターンで、一体ずつ立方体を破壊していく。数が多いが、とりあえず何とかなるか、と思ったが、そう甘くはなかった。


 数を半分くらいまで減らしたら、立方体がさらに分裂を開始。細切れになり、針のようになる。


 それが一本一本、物凄い速度で、こちらに向かって飛んでくる。


 クラリカが防御魔法を唱えて、防御する。一本一本直撃するたびに、壁にヒビが入って行く。


「っく、壊れる!」


 守りきれず壁が破壊された。

 俺は持っていた剣で、一本一本斬り落として行く。斬り落とされた針は、地面に落ちた後、消滅した。もう一回、襲ってくるということはないようだ。


 しかし、全てを斬り落とすことは出来ない。

 何本か斬り損ねて、体に直撃する。物凄い勢いで飛んできたうえ、さらに結構固いので激痛が走るが、俺の体も防御力が高いので、突き刺さりはしなかった。


 ただめちゃくちゃ痛い。最近、ダメージを食らってなかったので、久しぶりにここまで痛みを感じた。ここでひるんでいたら、もっと痛くなってしまう。俺は歯を食いしばって、痛みに耐えながら、針をたたき落とし続けた。


 針は俺だけでなく、クラリカもめがけて飛んできている。

 防御力が高い俺でさえ、あれだけのダメージがあるんだ。クラリカの防御力がどれほどか分からないが、食らうと不味そうなのは間違いない。


 クラリカに来た針も全部たたき落としていく。


 光の矢を放つ魔法を使って、クラリカも針を撃ち落としていった。


 しかし、あまりにも数が多すぎて、捌ききれなくなる。


 頭に何度か当たって、脳が揺さぶれれたが、何とか耐えて、叩き落とし続ける。


 突き刺さらないとはいえ、こんな攻撃を何十回も受けたら、下手したら死ぬかも知れない。

 とにかく必死で剣を振り続けた。


 クラリカの方に、大量に針が向かった時は、庇うように前に出て、代わりに針を受けたりもした。


 実際は恐らく10分くらいだろうが、主観的には十時間くらいの時間、針を捌き続けたが、剣を振った疲労と、攻撃を何度かくらった影響で、剣の速度が鈍くなり始めた。


 連続で針をくらい、気を失いかける。


 その瞬間、クラリカに飛んでいった針に反応することができなかった。


 ズシャッ! という音と共に鮮血が飛び散って、俺の顔にかかってきた。


「クラリカ!」


 俺は叫んだ。しかし、まだ針は飛んできていた。クラリカの様子を確認する余裕はない。必死で叩き落とした。


 しばらくすると、遂に針がなくなった。痛みと疲労でフラフラだが、再生リジェネスキルのおかげで、怪我はほとんど治っていた。


「クラリカ……」


 クラリカは心臓に針が突き刺さり、倒れていた。夥しいほどの血が地面に流れていた。


 とても生きているとは思えなかった。


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