第93話 回収

「……マ、マジ?」

「マジ……どこにもない。逃げてくる時、落としたと思う」


 な、何と。ここまで来てミスが……

 必死だったから仕方ないので、責めることは出来ないが、痛いミスだ。


「どの辺に落としたんだ?」

「分かんない。でも、集落のところだったら……」

「あのデカいのまだいるのか?」

「いるかも……」

「一旦ここから出て、奴がいなくなるくらいにまた来てから、また来るか?」

「うーんそれは……そもそも、どれくらいでいなくなるか分かんないからなぁ……私が前来たのは、数年前の話だし。下手したら数年あそこに居座ってるかもしれない」

「そ、そうか……うーん」


 メクにしたら1秒でも早く元に戻りたいだろう。希望が見えて、数年待ってくれとは言い辛い。


「仕方ない取りに行くか」

「き、危険だよ。あんな得体の知れないデカい奴相手に……」

「別にぶっ倒そうってわけじゃないから、何とかなるはず」


 倒すとなると、流石にデカすぎるが、攻撃手段があの遠距離からのビームだけなら、避けながら行けば良いだけなので、問題はないだろう。


「メクには早く元に戻れるようになってほしいんだ。行かないと」


 俺がそう言うと、クラリカがこちらを見つめてきた。


「あの子が好きだったのか君は」

「なっ……すっ!?」


 予想外のことを言われて、俺は動揺する。


「いや、す、好きとかじゃなくて、仲間としてだな。戻りたがっているのは知ってるからさ」

「ふーん、まあそう言うことにしておこう」


 若干ニヤつくクラリカ。確かにエルフ姿のメクは、びっくりするほど美人だが、恋心というか、そういうのは、ちょっと違うかも知れないというか。


「と、とりあえず行くぞ」


 俺は誤魔化すように集落に引き返し、クラリカが後に続いた。


 集落に着くまで、メモ帳は落ちていなかった。やはり集落の中に落ちているみたいだ。


 あのデカい直方体の謎の生物? はまだいた。こっちに向かって攻撃をしてくるので、それを避ける。

 早い攻撃ではあるが、避けられないほどではないので、当たる事はなかった。


 集落に入る。近づいたら、若干危なくなるがそれでも避けることは可能だ。クラリカの防御魔法もあるので、一応ミスって当たっても、一撃までなら何とかなる。


「あった!」


 メモ帳を発見した。拾おうと近づいたその時、直方体が、赤黒い色に変色した。血の色である。


 潜在的な恐怖心をその時感じた。


 やばい、と思うと、直方体が分裂。

 立方体が五十個くらい出来た。


 そいつらがこちらに一斉に飛んできた。


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