第79話 森で

 トーカ村から歩いて数十分のところに、ルクファナの森はあった。


 確かに言われた通り、森の中心辺りに巨大な樹がある。

 普通の樹より抜きんでた大きさであった。


「本当に大きい樹だにゃー」

「何年前からあれば、あんなにでかくなるのじゃろうか。まあ、あれなら目印としても申し分ないのう」


 あれだけ大きければ、迷わずに目指すことが出来る。


 俺たちは森に入り、樹を目指した。


 森に入って歩き出して、数分後、


 魔物と出くわす。


 二足歩行している大きなトカゲだ。

 リザードマンというやつだが、普通のリザードマンと違うところがいくつかある。


 まず体色が黄色だ。普通は緑である。

 さらに角が生えており、その角がビリビリと電気を帯びている。

 そして、通常のリザードマンより一回り大きかった。


 俺は【鑑定】を使って調べてみる。


『サンダーリザードマン Lv.33/43

 雷を帯びたリザードマン。非常に強力な電撃を操る。

 角は弱点で攻撃されると、数分間行動不可能になる。

 HP 222/222

 MP 32/32

 スキル 【雷撃サンダーショックLv3】

 耐性 【電耐性Lv10】」


【鑑定】も旅をしてあげており、レベル5になったので弱点とスキルまで見ることが出来るようになった。


 弱い魔物ではないが……まあ、俺の敵ではない。


「ここはアタシが行くにゃ!」


 とレーニャが装備していたナックルで、リザードマンに殴りかかる。


 レーニャも勇者との戦いや、旅の間にレベルは大幅に上がり、52になっている。


 レベル差があるので、レーニャは性能でサンダーリザードマンを圧倒。

 あっさりと勝利した。


「勝ったにゃー」

「サンダーリザードマンは結構強い敵じゃったという記憶があったがのう。レーニャも成長したのう」

「えへへ」


 それから俺はサンダーリザードマンを吸収。


 HP55上昇、MP8上昇、攻撃力13上昇、防御力11上昇、速さ10上昇、スキルポイント3獲得。


 このレベルの魔物がこの森にはどれだけいるのだろうか?


 頻繁に出るようなら、結構俺もここで強くなれるな。


 俺たちは巨大な樹を目標に森を歩いていく。


 巨大な樹が見えなくなった時などは、ジャンプして確認した。

 今の俺のジャンプ力なら、通常の樹の高さ以上飛ぶことが可能である。


 サンダーリザードマンは二度目は出なかったが、それに近いくらい強い魔物は、それなりに出現した。


 苦戦は全くせず、片っ端から退治して吸収していく。


 旅の道中にはあまり強い魔物と出くわすことはなかったので、そこまで急成長は出来なかったが、今回はかなりの勢いで成長している。


 今度からは危険だと言われている場所にも、積極的に行ってみるのもありだろう。


 数時間歩き続け、巨大な樹の根元に到着。


「近くで見たらさらにでかいにゃ。物凄く太いし」


 樹の太さは際立っていた。

 一周するだけで、数分かかりそうである。


「ここから西に行けばいいのじゃったの。テツヤ、コンパスは持っておるか?」

「ああ」


 方角を確かめるためのコンパスは、旅をするためには持っておきたいので、以前に購入し、常に携帯していた。


 俺は懐からコンパスを取り出し、西がどちらかを調べる。


「こっちだ。行こう」


 西がどちらかを調べたら、その方角に向かって俺たちは歩き始めた。


 魔物を倒しながら歩いていく。それなりにレベルの高い魔物が出てはきたのだが、苦戦するほどの奴は出てこなかった。


 歩き続けて一時間ほど、


「お、あれじゃないか?」


 俺の視界の先にオンボロの小屋が見えてきた。


「たぶんそうじゃのう」

「ボロい小屋だにゃー」


 近付いて確認する。


「ふむ、もしかしたら出て行ったのは一時的なもので、ここに帰ってきている可能性もあると思っておったが、このようすではそれはないじゃろうな」


 小屋はもう何十年も放置されているというくらいのボロボロさだ。

 ここに人が住んでいるとは到底思えなかった。


「中に入って調べてみよう」

「ああ」


 俺たちは小屋の中に入る。

 扉は壊れていたので、開けずに中に入ることが出来た。


 家の中もボロボロだが、床に魔法陣が書いてあったり、かけたツボがあったり、ボロボロの本が置いてあったりと、魔女が住んでいたという雰囲気は微かであるが残されていた。


「生命の魔女かどうかは分からんが、魔女が住んでおったのは間違いないのう。どこにいったか手掛かりはないものか」


 俺たちは小屋の中を捜索した。


 若干抵抗はあるが、タンスの中や棚の中も隅から隅まで探した。

 メクはわしに呪いをかけたやつに対する礼儀などない、と全く遠慮なしで部屋の中をあさっていた。


「……これは」

「どうした?」


 メクが何かを発見したようなので、俺はそれを見に行く。


 一枚の紙を見つけたようだ。


 それにはこの世界の地図が描かれていた。


「これを見よ。丸で印がついておる」

「本当だ。『次の目的地』っても書いてあるぞ。ここにいるのかな?」

「目的地と書いてあるだけじゃから、分からんが……ほかに手掛かりもないのなら、ここにいくしかないじゃろうな。しかし、ここはテンノース山か……」

「テンノース山?」

「印が入っている場所がちょうどテンノース山と呼ばれる山がある場所なのじゃ。この山は結構有名な山じゃ。世界で二番目に高い山として知られておる。場所はハルカード帝国にあったはずじゃ。龍人どもの帝国じゃな。世界最大の国としても知られる。この国とは隣接しており、かなり仲が悪かったと記憶しておるのう。今は休戦中じゃったが、戦は何度も起こっておる」


 龍人とは、龍の翼と尻尾、角が生えている種族だ。

 リザードマンとは根本的に違い、リザードマン扱いされるとブチ切れることがあるらしい。俺も何度か見たことはある。


 隣接しているのならそんなに遠くはないかもしれないが、また別の場所に行かないといけないとは面倒だな。


 何かこの調子でたらい回しにされそうな予感を感じてしまう。


「とにかくここに行ってみるかのう」


 もうすでにいない可能性も十分あり得るが、ほかに手掛かりもない。

 次の目的地はテンノース山に決定した。

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