第80話 帝国

 早速森を出てハルカード帝国へと向かう。


 隣の国なので、そこまで遠くはなかった。数日歩いていたら到着した。


 クレンフォス王国との国境付近にある、小規模な町に立ち寄った。


 アルメイクという町らしい。


 町に入ると、龍人の国らしく龍人だらけであった。


 ただ町民の俺たちを見る目はあまり良くない。


 特に獣人であるレーニャは嫌われているようで、露骨に嫌そうな視線を向けられていた。現在は戦をしていないようなので、一応入ることは問題ないようだったが。


 テンノース山は有名な山であるが、メクも詳しい場所までは知らないという。

 まずはここでテンノース山の場所を尋ねるとしよう。


 ただ、獣人のレーニャだけでなく人間の俺もあまり好ましく思われていないようで、結構無視される。


 五人目くらいでようやく口を聞いてくれる龍人と出会った。


「あ? テンノース山? あんなところに人間と獣人が何の用だ」


 話を聞いてくれるといっても、かなり険悪な感じなのだが。

 無視よりは遥かにましだ。


「人を探していて………」

「テンノース山は帝国の一番北の方にあるが……はっきり言って危険だ。ドラゴンが住んでるからな。まあ、人間と獣人がどうなろうと俺の知ったことではないがな」

「北と言っても分かりにくいので、もっと詳細な場所を教えてくれないか?」

「めんどくせーよそんなの。北に行きゃ山が見えっから、そこ目指してあるけばいいだろ」


 そんな適当な方法でたどり着くのか?


「距離はどのくらい?」

「歩きだと二十日はかかるぞ」


 二十日か。

 まあ、俺たちならもっと早く行けるだろうが……それでも十日はかかるか?


 少し路銀が厳しくなってきている。

 十日間移動するには、今の金額では足りないだろう。

 金を稼がなければならない。


 この国に冒険者ギルドがあるかは知らないが、この感じだと俺が登録すること

 は不可能だろう。


 魔物を倒して、その素材を売るというのが一番いい方法か?


 買い取ってくれるかどうかだが……一応、この町で食料は買えたので(店の人の愛想はめっちゃ悪かったが)売るのも問題はないと思う。


 今までは【死体吸収】が使えないので、素材を売るというは避けていたが、この際仕方ないな。


 とりあえず今日は宿を探すとしよう。

 日が沈みだしてきたからな。


 てか宿には泊まれるのか?


 確認してみよう。


 最初の宿には獣人お断りと書いてあった。無理そうである。

 次の宿にも行ってみたが、ここも獣人お断りの看板が。


「何だか申し訳ない気分だにゃ」

「レーニャが謝ることじゃない」

「この町は本当に獣人を嫌っているようじゃのう。まあ、長い間戦争をしておったようじゃし、無理もないと言えば無理もないが……レーニャはケットシーであるが、クレンフォス国民ではないのに理不尽じゃのう」


 何軒か見て、ようやく獣人お断りじゃない宿を発見する。


 宿に入るといい顔はされず、恐らく少し割高に宿泊費を取られたが、泊まることが出来た。


「とにかく路銀がもうつきそうだ。かなり高く取られたし。一旦この町で金を稼ごう」

「まあ、あまり長くは留まりたくない町じゃが、今は仕方あるまいな」


 あまり住民からいい目で見られないので、さっさと出ていきたいのはやまやまなんだけどな。


 俺たちも強くなったし、路銀を稼ぐくらいは恐らくそんなに時間はかからないと思う。


 それから、夜になり俺たちは眠りについた。

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