第76話 生命の魔女
「この生命の魔女がわしに呪いをかけた女なのかもしれん」
メクはそう答えた
「何て書いてあったんだ?」
俺はメクに本に何が書いてあったのかを尋ねた。
「生命の魔女に関する記述じゃ。この魔女はほかの者には使えぬ独自の魔法をいくつも作り出しておるらしい。他人の傷を一瞬で全快させたり、心の傷をいやしたり、新たな命を作り出したり……その手の魔法を使うことから生命の魔女と言われているようじゃな」
「話を聞く限りなんか悪いやつには思えないんだけど」
「基本的には良い存在なのじゃが、時には人をぬいぐるみの姿に変えてしまう事もあると書いてあった。まさしくこの生命の魔女がわしをぬいぐるみの姿にしたとして間違いあるまい」
メクはそう言いながら、本をその記述がある箇所を俺に見せてきた。
確かに、生命の魔女は他人をぬいぐるみの姿にすることもあるそうだ、理由は知られていない、と書いてある。
「でも、これ何年前の本なの? そんな昔からいるのかな生命の魔女って。今も生きているのか?」
「この本は数十年前に書かれたものじゃろうな。生命の魔女はこの本が書かれた何百年も前から存在するらしいのじゃ。どうやら寿命を延ばす術を有しているようじゃな。まあ、今も生きているかどうかは分からんが、基本的に呪いだとか魔法だとかは、使用者が死んだら解けるものじゃからな。まだ生きている可能性が高いとわしは思っておる」
まあ、魔女の魔法は特殊らしいし、普通の魔法とは違う可能性もある。
仮にかけたものが死んでいるのに、メクの魔法が解けていないというのなら、手詰まりである。生きていると信じたほうがいいだろうな
「しかし、基本的に良い存在と書いてあるが、何だか腹が立つのう。じゃあ、なぜわしをぬいぐるみにしたのだ」
「師匠なんかやっちゃったかにゃ?」
「何もやっとらんわ! ……多分」
少し自信なさげなのはなぜなのだろうか……
「ま、まあ昔のわしは多少やんちゃすることもありはしたが、それでもこのような仕打ちをされなければならぬほど、悪いことをした覚えはない。やはり生命の魔女許すまじ。多少いい存在なのだろうが何だろうが、会って呪いを解かせたら一発殴る。いや、殴るのではなくアイススピアをお見舞するのじゃ」
メクは怒るべき相手が判明して、怒りを徐々に上昇させていく。
「その生命の魔女ってのはどこにいるんだ?」
「この本が書かれたときは、ルクファナの森というところに住処を作っておったらしい。その森があるのはクレンフォス王国と書いてある。獣人が支配する国じゃな。ここからは確か結構遠くにあった国のはずじゃ。まあ、だいぶ前の情報じゃらかすでに住処を変えておる可能性もあるがのう」
「でも行ったら手掛かりがあるかもしれないし、行くべきだと思うぞ」
「そうじゃな、では早速クレンフォス王国まで行く準備を……」
とここまで行ってメクは俺とレーニャの顔を見る。
「これはお主の刻印とは無関係の出来事かもしれぬから、お主はここに残って調べ物をしても……」
「何だよ水くさいな今更そんなことを言うなんて。刻印には関係ないかもしれないけど、メクだけで行かせるなんてできるかよ」
「そうにゃ。アタシもテツヤも一緒に行くにゃ」
「そ、そうか……」
メクは少し安心したように言う。
「分かった。仮に今回の旅で元の姿に戻っても、わしはテツヤの刻印を消すまでは国には戻らん。約束する」
「何かそう約束されると、ファラシオンの人たちに申し訳ない気もしてきたな……」
「サクがいるから何とかなるじゃろうファラシオンは」
そのサクさんが一番メクがいなくて、困ってたような気がするけど。
まあ、メクがいないと途端にどうすればいいのか分からなくなりそうだ。メクのアドバイスがあったからここまでこれたという事もある。元の姿に戻ったメクと一緒に冒険するというのは、少し、いやかなり緊張しそうな気もするけど。
「じゃあ、クレンフォスまで行く準備を始めるかのう。遠いから念入りに準備をするのじゃ」
俺たちは図書館を出て、クレンフォスまで行く準備を開始した。
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