第75話 本探し

 勇者たちを撃退したあと、俺たちは図書館で刻印の情報や、メクの呪いの情報などが書かれた本を捜索する作業を開始した。


 街を救った功績で図書館に入る費用を免除すると言われたが、勇者に防壁をボロボロにされたのでその修繕費が必要だろうから、ここは払うことにした。

 大した値段ではないので問題はない。


 まずは前までと同じく、誰でも読むことが可能な本を読んで手掛かりを探すことにした。

 中々見つからない。

 途中リコに手伝ってもらうこともあった。

 リコは町が勇者に襲われたあと、色々やることが多くて大変らしい。

 ヴァーフォルのトップたちと、これからの方針を話し合ったり、戦いで死んだ兵士の遺族たちの悲しみを癒すため、祈りを捧げたり寄付をしたり、女の子であるリコだがLvが高く、筋力も結構あるので防壁の修繕作業を手伝ったり、本当に大変そうだ。

 それが原因で、倒れてしまった時があるようで、部下から休みを強制的に取らされたようだ。

 本が読むのが好きなリコは、息抜きを兼ねて調べ事を手伝うと申し出てきた。

 何だか悪い気もしたが、ストレスにはなってなさそうなので、手伝ってもらった。手伝って貰った期間は三日間である。


 それからしばらく探し続けたが、やはり簡単に見つけることは出来ず、許可を得なくても読める普通の本を全て調べてはみたものの、刻印かメクの呪いについて書かれている本は一つもなかった。


「うーん、やっぱりなかったかぁ」

「やはりここは、許可を得ないと読めない本を調べてみないと、見つからなさそうじゃのう」


 メクがそう結論を出した。


 図書館の司書に事情を話すと、「リコ様から許可はすでに得ています」といった。手回しが速いな。


「付いてきてください」


 司書はそう言って歩き出したので、言われた通り付いていく。


 立ち入り禁止と書かれた扉の鍵を開け、司書はその扉の向こうへと入っていく。


「ここが特殊図書が収納されている部屋です。ここの本は絶対に持ち出してはいけないので、それはお気を付けください」

「分かった。ここにはどんな本があるんだ?」

「禁止された魔法の本だったり……一般人が読んだら衝撃を受けるような歴史の話だったり、禁じられた儀式や技術が書かれている本だったり……色々ですよ……」


 とにかく禁止されているあまり良くない術が、本に書いているのだろうか。

 刻印や、メクの呪いも真っ当な方法ではないだろうから、ここにある本の中に書いてあっても不自然ではないな。


 本の量は決して少なくはないが、一般図書の本の量に比べると、全然少ない。これなら数日で調べ終えれると思う。


「じゃあ、早速調べるか」


 俺たちは本を読み始めた。


 本を探し始めて、数時間経過。


 題名を見ながら刻印のことが書いてありそうか、なさそうかまず判断をして、禁術書と呼ばれる本があったので読んでみた。


 文字は理解できるのだが、書いてある文が支離滅裂で内容がまるで理解できなかったため、読むのを断念。


 もしかしたらメクなら理解できるだろうと思い見せたところ、かなり苦戦したが何とか理解できたようだ。しかし、刻印と呪いに関する情報は書いていなかったようである。


 その後も呪いと刻印の情報が書いてありそうな本を探していく。

 だいぶ時間が立つ。

 腹も減ってきたし、疲れてきたので今日はここまでということになった。


「今日はなかったにゃー」

「まあ、一日目から簡単に見つかるもんじゃないだろう」


 一日目は空振りに終わり、宿へと戻った。


 翌日も本探しをする。


「こ、この本は!!」


 レーニャがびっくりしたような声をあげる。


 見つけたのか!? とは思わない。

 レーニャは刻印や呪いの本を探してはいるのだが、自分が個人的に気になる本を見つけたらそれを読んでしまうのである


「どんな本があったのじゃ……?」


 メクもレーニャのことは分かっているので、若干呆れた口調で尋ねた。


「禁断の料理100選! 食べたらうますぎて精神が死んでしまう料理一覧にゃ!」


 案の定料理の本だった。

 しかし食べたらうますぎて死ぬって、怖いなおい。ここに置いてある本なだけあるな。


「相変わらずお主は……真面目に探せ真面目に!」

「にゃー……」


 メクに怒られてへこむのも、いつもの光景である。


「ごめんなさいにゃ。一応もう一つ見つけたんだけど、こっちもいらないかにゃ……」

「どうせ食べ物関連なんじゃろ?」

「そうじゃないにゃ。『生命の魔女について』って本なんだけど」

「ほらやっぱ……りじゃない。生命の魔女……?」

「これにゃ」


 レーニャは白い本を俺たちに見せた。


 表紙は題名の生命の魔女についての文字以外は、白色である。


「生命の魔女か……」

「メクに呪いをかけたのって魔女だったっけ」

「わしは声しか聴いておらぬから何とも言えぬが、女の声だったのは間違いない」

「じゃあ、魔女の可能性もあるか。でも生命の魔女って何か呪いをかける感じに聞こえないけどな」

「わしもそう思うがのう。一応読んでみるか。レーニャ良く見つけてくれた」

「にゃはは」


 メクに褒められて少し嬉しそうにしながら、レーニャはメクに本を渡した。


 メクがそれを読んでいく。


 呪いについて書いてあるのかは気になるところだが、ここは本探しを続ける。


 中々良さげな本が見つからず、数分経過。

 すると、


「これは……!!」


 メクが大声をあげた。


「どうしたんだ?」

「いや……うむ……そうか……」

「手掛かりがあったかにゃ?」


 レーニャの問いに、


「この生命の魔女がわしに呪いをかけた女なのかもしれん」

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