第72話 vs勇者オオシマ③

 【伝説化レジェンドモード】は使用しても、周りから目に見えて分かる変化は起こらない。


 使用者である俺は使った瞬間に、このスキルの効果を実感していた。


 とにかく凄まじい力が湧き上がって来たのだ。


 ステータスを見るまでもなく、遥かに自分が強化されたということが分かる。


 今の俺ならば、奴の盾に反応できない速度で動けるかも知れない。


 よし、やろう。


 俺は剣を構え、全力で動き始める。


 今まではありえない速度で、俺は動く事が出来るようになっていた。


 まずは正面からオオシマに向かっていき、近づいたらすぐに方向転換をしてオオシマの後ろに回り込む。


 俺は剣でオオシマを斬った。


 盾は超反応をするのだが、予想どおりこの状態の俺の速度にはついていけていないようである。


 剣はオオシマの肩に命中した。


「っぐ!」


 相変わらず丈夫なやつで、結構全力で斬りかかった割に、それほど攻撃は効いていないようにも見える。斬れて血が出ているというわけでもない。鑑定してHPを見てみたが、やはりそれほど減ってはいない。


 剣での攻撃ではなく、スキルで攻撃した方が効くかもな。攻撃が当たる間合いまで入って、【闇爆ダークブラスト】を放つ。


「ぐあああ!!」


 顔に命中、先程の剣撃よりかは効いているようだ。【闇爆ダークブラスト】は、スキルポイントをだいぶ使い、スキルレベルを7まで上げている。そのため攻撃力がかなり上がっているため、そのおかげでオオシマにもだいぶダメージが入っている。HPは150くらい減っていた。


 幸いオオシマには、タケイにあった【再生リジェネ】がないようだ。ダメージを自動的に回復していない。


「クソが……てめーいきなり速くなりやがって……駿みてーな能力でも持っているのか? 駿の能力には制限時間があったが……まあ、奴のにもあるか。なかったらずっと使ってるはずだしな」


 このスキルは自分で使うのは初であるので、制限時間の存在は知らなかった。


「ふん、俺の盾には制限時間はねー。あくまで盾はダサい感じがするから、普段は出してないだけで、別にずっと出していてもいいんだ。お前のスキルの効果が切れるまで防ぎ切ったら俺の勝ちだ。お前は俺に攻撃する手段がないんだからな」


 確かに、【伝説化レジェンド・モード】が切れれば、攻撃を当てる事は困難だ。

 ただ、相手も素の俺に攻撃出来ない程度の実力なので、勝ちとはならないと思うが。まあ、オオシマを倒すという目標が達成不可能になった時点で、実質的に負けであるがな。


 制限時間がどれだけあるかは不明であるが、スキルの効果が切れるまでに奴を倒さなくては。


「にゃー、戻ったにゃー」

「テツヤ、後は頼んだぞ」


 レーニャとメクが元の姿に戻った。もう二人は戦えない状態である。自分一人で倒さないといけない。


 俺はそれから何度も攻撃をした。


 攻撃が通る可能性は100%ではなく、たまにオオシマの盾に防がれることもあった。当然そうなると【闇爆ダークブラスト】をその身で受ける羽目になる。【伝説化レジェンド・モード】で防御力が上がっているとはいえ、かなりダメージを受ける。


 ただ、オオシマに攻撃が入る場面の方が多かった。


「……ク、クソ」


 十発ほど攻撃が入ると、奴のHPも残りわずか。

 まだ【伝説化レジェンド・モード】は続いている。


 これで決める。


 俺は全速力で動き、オオシマの背後に回り込む。


 敵の反応より、俺の方が速い。


 オオシマの顔に【闇爆ダークブラスト】を叩き込んだ。


「ぐ……は……」


 オオシマのHPはゼロになり、その場で倒れ込んだ。

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